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第三十二景「有機化学Ⅴ」~やはり化学はおもしろい!伝道師として伝えたい有機化学の魅力~

2021.05.06

第32回は、工学部学科3年生向けの授業「有機化学Ⅴ」について、応用化学科の山崎孝先生にお話を伺いました。
有機化学を学んでいない人でも楽しめる内容となっています。ぜひ最後までご覧ください!


<プロフィール>
お名前:山崎孝(やまざき たかし)先生
所属学科:工学部応用化学科
研究室:応用化学部門山崎研究室
趣味:音楽 (J-POPからクラシックまで)

有機化学Ⅴとは

ー早速ですが、この授業ではどのようなことを学べるのか教えてください。

応用化学科には、有機化学という名前のつく授業が1年生の前期から連続して計5種類あります。「有機化学Ⅴ」は名前の通り5つ目で、それまでに習った有機化学の知識を組み合わせながら総復習していく授業内容になっています。

ーこの授業は毎年同じ内容で構成されているのですか?

今年が6年目になりますが、毎年何らかの変化はありますね。化学だから新しい研究結果も増えていくわけですよ。たとえば、ノーベル賞の話題はいろんなところで紹介します。農工大でも遠藤章先生がノーベル賞を受賞されるのではないかと期待されていますよね。遠藤先生が発見されたスタチンが何に使われているか知っていますか?

ー全然知らないです…

現代病(※高脂血症や動脈硬化)の薬です。人間の体は、脂肪分を摂りすぎると肝臓に脂分を貯められなくなって、血液中にどんどん放出してしまいます。そうすると血液がどろどろになって、酸素が上手く運べなかったり老廃物を出せなかったりして病気になります。遠藤先生が発見されたスタチンというのは、体内でコレステロールを生合成する経路を遮断する働き(※コレステロール低下作用)があるんです。最初に見つけられたスタチンは、もう使われてないはずなのですが、そこからさらに改良されて、世界で毎年およそ3兆円分も使われているといわれています。下にあるのがアトルバスタチンで、10年くらい前には世界で最も使われた薬でした。遠藤先生のご功績の大きさがわかりますよね。このように、私が専門としているフッ素化学は創薬とも関係が深いんです。

アトルバスタチンの構造式

ーとても興味深いです。そういった具体的なお話も含めて、授業をされるなかで、伝え方など何か意識されていることはありますか?

すごくメリハリをつけるように意識はしています。ときどき笑えるような話を盛り込んだりもします。笑ってくれるかは別ですが(笑)。ちょっと脳みそを休ませるような時間も授業中には必要かなと思います。

ーそれはすごくありがたいです。集中力が持たなくなってくるので…

座っている人にとっては大変ですよね、90分って。ぼくらは立って授業をしているし、集中しているからそうでもないんだけど、やっぱり色いろと聞きながらメモしたりしていると大変ですよね。

ー今はオンラインで授業をされていますよね。そうなるとメリハリのつけ方も変わってきますか?

昨年度(2020年度)はオンライン授業が初めてだったでしょ。幸いなことに、もともと僕はパワーポイントを使って授業の資料をつくっていて、そのスライドに声を吹き込むだけで済んだから、それほど大変ではなかったです。しかし、相手の反応は見えないし、すごくやりにくくて、授業をやっていてあんなにおもしろくないことはなかったですね。今年度は、実際に僕が講義をしながらのオンラインとなっているけど、早く対面で授業を行いたいですね。

授業づくりに対する想い

―そうしたなかで、先生ご自身の授業づくりに対するモチベーションはどういったところにあるのでしょうか?

伝道師といったら大袈裟かもしれないのだけど、やはり“有機化学おもしろいんだよ、君たちの身の回りには有機化学があふれているでしょ”ということを伝えるのが僕らの役目だと思っています。本当に我々は有機化学に囲まれているんだけど、わかっていないことがたくさんあります。なかなかそれを実感するのは難しいと思いますが、たとえば、このカメラだってボディはプラスチック、つまりポリマーなので有機反応によって合成された素材です。

農工大生の多くは、高校でも有機化学を教わっていたはずだけど、たぶんほとんどすべての内容を丸覚えしていたのではないでしょうか。でも、実際には、AからBができるという反応を見たときに、その間にどんなことが起こっているかという反応の機構が理解できると、同じように説明できるものがあるんです。これまでは全部鵜のみにして覚えていたけれど、実は1つ覚えておけば、複数のことを同じように理解できるんだと、どんどん広がるんですよ。その入り口のところを授業では教えています。

―知識を頭に詰め込むだけではなくて、身の回りから有機化学を考えてみたり、化学反応に対しての見方を変えてみたりするのは、大学だからこそ幅が広がる部分ですよね。

そうですね。高校だと、AからBができますという反応の化学式がずっと並んでいるだけ。全部覚えなきゃいけないという話になってしまいます。でも本当はそうではないんですよね。大学では、AにCを加えたらもっと反応するし、Dを加えたら反応しなくなるというような反応の機構について詳しく学べます。

―なるほど。わたしも高校で化学を選択していたのですが、暗記ばかりになってしまって、有機化学の実社会への応用などについては考える余裕はなかったです。山崎先生のお話をお聞きして、有機化学をすごく身近に感じることができました。ありがとうございました。


山崎先生の「授業百景」はここまで!
授業百景第三十二景はいかがでしたでしょうか?

山崎先生の今に至るまでの経緯、研究への想いについて詳しく知りたい方は「#32「山崎孝先生」~小さな実験室のフラスコにみる世界初のロマン。フッ素と私たちの暮らし~」もあわせてどうぞ!

文章:すだち
インタビュー日:2020年11月05日

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。