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第三十七景「地圏環境学」〜地質も、海も、生物も!見えない繋がりを面白がる〜

2021.12.21

第37回は、環境資源科学科1年生向けの「地圏環境学」について、梅澤有先生にお話を伺いました。

勉強は高校生までで十分してきた?いやいや、まだ知らない学びの方法、ときめきを感じてください!記事を通して、大学での自由な学びを感じられるかもしれません。海好きの方も必見です🌊

<プロフィール>
お名前:梅澤有(うめざわ ゆう)先生
所属学科:環境資源科学科
研究分野:生物地球化学、生元素動態、海洋化学
趣味:スポーツ観戦、マリンスポーツ


「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりの面白さ

―地圏環境学とはどのような授業でしょうか?

地球表層の生態系・物質循環に影響を与えうる範囲の地圏環境(表層地質や水圏の堆積物、植生環境)の特性や調査方法についての講義を行っています。

簡単に言うと、まず、「僕らの足元にある土壌や地質が、どのように出来上がってくるのか」ということです。例えば、海で生きていた生物の遺骸が、長い時間をかけて海底に積もって、その部分が隆起して陸になるとか。いろんなプロセスを通して今の状態ができあがっているんです。

次に、この地質が、今度は川や地下水、沿岸域の水質に影響を与える要素の1つになっています。そして水質が変わってくると、その水質にあわせて生物の種類も変わってくることがあります。つまり、「地圏環境が水質を変え、その水質が今度は海の生態系に影響を与える」という一連の流れがあるんです。こういった流れについて、いろいろと寄り道をしながら教えていきます。

―なるほど、一連の流れですか

そうです。「風が吹けば、桶屋が儲かる」ということわざ、知っていますか?

―はい。確か…(風が吹く→舞い上がったチリやほこりで盲人が増える→盲人が琵琶法師になる→琵琶法師の三味線に使う猫の皮捕りによって猫が減る→天敵が減ってネズミが増える→ネズミが桶をかじってダメにする→桶を買い替える人が増えて、桶屋が儲かる。)

このことわざのような、関連性の面白さですよね。風が吹くことと桶屋が儲かることみたいに、最初はこう、全く関係のないように見えることが繋がっていった結果、ある自然の事象が起こっていると言うことです。海洋生態系の環境悪化も、資源量の回復も、自然生態系のあらゆる事象には必ず理由があるんです。でも、それを単純には説明できないので、複合的な要因——「風が吹けば桶屋が儲かる」的な要因を考える必要がある。こういうところが、僕自身面白いと思うところであり、学生に知ってもらいたいところです。

―学問について、内容が専門的になればなるほど、狭く深くなっていくイメージを漠然と持っていました。しかし、先生の講義では、分野と分野の間の壁を感じさせないというか、つながるという感覚が強いという声があります。意識していることは何ですか?

実は、地圏環境学の授業に関しては、1つの教科書に沿って行うのではないんですよね。学際的な研究をそのまま授業に落とし込む形で授業をつくっているんです。

―教科書、ないんですね…!

そうです。教科書になっているものは教科書を読んで勉強してくれればいいかなと思っていて、この授業では学際領域のことを皆さんに知ってもらいたいんです。

―学際領域、ですか。

はい。全く別の教科書に載っているような異分野の内容が、実は複雑に絡み合っているんです。ある授業で出てきたことと、また別の授業でやったキーワードが、この地圏環境学の授業を通してひとつに繋がる、みたいなことを目指しています。そうするとその人の中での学問が、もう一段階深まるというか、より記憶に留まる知識になってくれると思うからです。

―教科書から1つの分野を学ぶことができたとしても、そのような異分野のつながりを知るのはなかなか難しいですよね。

そうですよね、なのでこの授業では、そういうことを理解する手助けになることも目指しています。

いろはすで育つプランクトン🦠

―ありがとうございます。他に授業づくりの中で工夫していることはありますか?

面白いと思って授業に集中してもらうために、動画や写真・図などの視覚情報を多く入れ込むほか、関連した内容で学生が興味を持ちそうなことを余談として話しています。

―例えばどんな話がありますか?

例えば、水質の調査について扱うときは、「いろはす」を取り上げています。「いろはす」のミネラルウォーターは、採水地がさまざまだから、同じパッケージでも水質が全く違うんですよ。

―えー!そうなんですか?そんなこと考えたこともなかった…

だから、「いろはす」を使ってプランクトンを育ててみると、プランクトンがよく育つボトルと全然育たないボトルがあったりして。

―(゜゜)!めちゃくちゃ面白いですね。

他にも、石鹸の泡立ち、料理の食材との相性など、さまざまなことに関係してきます。学生にとって身近なことを導入として話すことで、一般水質分析やトリリニアダイグラムの作成といった専門的な内容を聞いてもらえるようにしています。

―なるほど、先に面白い、知りたいという気持ちになることで、身に付く知識も変わってきそうです。

そうそう。学際的ということとも通じるんだけど、いろんな分野の面白いことがあって、そういったことが知識を身につけることにつながりやすいと思うんです。逆に、そうして自然科学の知識をたくさん持てば持つほど、日々の生活の視点やニュースでも面白いと思える内容が増えていきます。相乗的に、新しい知識が頭にしみ込んでいく。
樹に例えると、基礎的な知識として、幹があり、そこに枝を作っていって葉を茂らせると、より大きな樹木となり、気づいたら、隣の別の樹木(別の授業)と合わさって森を形成して、新たな森林生態系としての機能が見えてくる…みたいな、そんなイメージを持っています。

―わあ、知識は樹のように茂って森となる、面白いです。バラバラではなく繋がっているイメージが湧いてきました。他に意識していることがありますか?

学問は現在進行形で進んでいる、生きているということを実感してもらうために、最新の論文の面白いと思う内容を入れるようにしています。そのせいで、初めてこの講義を開講した頃に作ったスライドがあるんだけど、なんかもうどんどん毎年追加されて量が多くなってきています。授業時間が足りなくなってきて、どんどん早口になってきて(笑)ここは反省点です。

―(笑) 

自分が面白い!と思ったことを人に伝えてほしい

あとは、地圏環境学の講義の最初に、環境教育の話を1時間しています。大学生って、勉強という意味で積み重ねてきた最後の部分というか、集大成ですよね。だからその勉強が、試験を受けて点数を取るためだけではもったいない。学んだ知識の面白いところを、子供たちとか一般の人に伝えて広めた方が、よっぽど価値があると思うんです。だから、何かひとつでも授業の中で面白いと思ったことを人に伝えてほしい。それもただ話すだけじゃなくて、何かツールを用いて印象深く伝えることをぜひ頭に思い浮かべながら、大学の授業を受けてくださいと話しています。

別に全員が研究者を目指さなくていいんです。例えば、1980年代に地球大紀行という、地学系のNHKのテレビ番組があったんですけど、これがね小さい頃に見ていて、すごく面白かったんです。今の僕の研究とは直接関係はないのですが、僕の受け持っている「地球環境地学(2022年度以降は、地学)」という授業で扱っている内容は、まさにこれです。
と、話がそれてしまいましたが、こういう良質な科学番組はやっぱり、サイエンスを楽しいと思ってる人がディレクターになっていなかったら生まれていなかったと思うんです。だから研究者だけじゃなくて、民間の人でもいいし、お父さんになる人、お母さんになる人、みんなが、何かしらサイエンスの面白さや楽しさを知っていることがすごく重要だと思うんです。そして、サイエンスを一部の人のものにしないこと、その裾野を広げていくことが、教員としての僕の責務だと思っています。

農工大の基礎ゼミ参加学生のアイデアで改良もした環境教育のためのサンゴ礁スゴロク

梅澤先生の授業百景はここまで!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
このような意識をもって、研究者としてどのようなことができるのでしょうか。海、循環、手作り、環境教育、フィールドワークのキーワードのいずれかにピンと来た方。ぜひ、「梅澤有先生」〜どんな子どもたちにも自然体験を!裾野を広げる海洋研究者〜も合わせてどうぞ!

文章:ノコノコ
インタビュー日:2021年5月19日

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。 
※インタビューは感染症に配慮して行っております。