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授業百景

# 第三景 授業の準備が楽しすぎる!凝り性でどうにかしないと笑。vol.2

2020.03.10

殿塚先生の「授業百景」vol.2です! vol.1はこちら


殿塚隆史(とのづか・たかし)先生
応用生物化学科

教養(基礎)は意外と難しい。

学生にはつまらなく感じるところも多いが内容は重要。
ただしつまらないもの(注を参照)を盛り上げるのは難しい

 次の、かなり大事なポイントです。私は講義ノート(写真③④)を作ってるんです。最初にね、何にも準備しないで授業をやろうとしても、いざ授業になるとすらすら書けないでしょ。だから、基本的には作った講義ノートの通りに書いているんですよ。まずはね、この講義ノートを作るっていうのが重要で、教員も理解しないとつくれないんですよ。

 ただ、教養の授業はなかなか難しいところがあって、この教科書(ブラディ)、あなたも苦労したみたいですけど。
―苦手な教科書でした…(*_*) いや、意外と専門より教養の方が難しかったりします。専門の方では、例えば実際にはこうだったって具体的に出てくるんだけど、教養は理論だからなかなか抽象的だし、僕も実は理解できないところがあるんですよ、授業やってて。だってこれ難しい笑。
―そうなんですか?! だけど、この内容、中身は変わらないんですよ、僕が学生の頃と何も変わってない。もちろん単位がSI単位系に変わってとかそういうのはありますけど、本質は何も変わってないです。で、これをどう授業するの、どうするかっていって、つまんない、はっきり言ってつまんないんです笑。(注:講義の内容は重要であるが、学生にはつまらなく感じられるということであり、内容そのものをつまらないと言っているのではない。)
―え笑。 つまんないのをなかなか盛り上げるって難しい笑。ただ、意外とこの教科書にもいいところはあるんですよ。ふつう物理化学・理論化学って、どうしても数式が出てきちゃうんですよ。例えば、赤色の教科書だと典型的で「基礎」って書いてあるんだけど、偏微分がいきなり出てきたり、同じような内容でも、大学の場合は教科書によって表現が違う。なので、僕は結構教科書を買い込んでいて(写真⑤)、色々見た上で、じゃあこんな感じで統一しようということで、熱とは何か、これはこういう流れでって、ストーリーを組み立てるんですけど。その辺のところって、理解しないと教員にとっても基礎化学ってなかなか難しい。

どこまで教えるかが意外と難しい、一般教養

 ただね、じゃあやらなくていいかってそういうわけにもいかない。他学科の方でもたぶん、熱力学の考えってちょっと出てくることってあると思うんですよ。例えば、生化学だと代謝の話が出てきて、結局エネルギーの話や考え方とかが出てくるんですけど、エネルギーの授業で扱う19世紀の考え方が意外と難しい。
  でも後々、エネルギーを測るような機械を使うとしたらエネルギーの法則も理解していた方がいい。だから、そのために農学部の人に偏微分のレベルまで理解が必要かと言われると、それはちょっと違うように思う。 実際、生化学ではそれほど偏微分は出てこない。だから、最初に何らかの授業で勉強しておかないとしないとダメなところはあると思う。
―そうですね。ある程度はさらっとでも。

 教員も理論のところはかじっておいて、その知識をベースにして機器分析やるとか、そういうことはあるから。機器分析にしても、機械の細部の構造の部品のことまで知らなくても、いいじゃない。身近な例で言えば、車運転するにも車の整備士じゃないから、車のパーツとか一から全部覚えなくてもいいけど、車の原理ぐらいは知っておいた方がいいと。そんなもんですよ、一般教養は。
―なるほど。 で、同じですよ。環境分野でも温室効果ガスとか熱力学的な考え方って出てくるんだけど、その元になる複雑な式までは理解しなくていいと思うし、そこまでは授業で扱いきれないのでどこまでやるかっていう点で、大学の授業は難しいところがあります。
 それで、教員も理解できていないことを説明するのはやっぱり無理だから、そこに書いてある、教員の予習は大事である、と。理解した上で作っていくので、講義ノートは単に教科書のキーワードをただ抜き出したものではないです。
 授業アンケートに、板書や流れがとにかくまとまっていて素晴らしい!て書いてくれた人がいて、それは相当うれしいですね笑。

 あと、教科書は1つ指定する。その方が、学生は予習復習がやりやすいし、こちらも試験範囲とか指示しやすい。
 講義の内容は、理論と実際のことをバランスとりながらやる。理論だけでは単調になるし、具体例だけでも進まない。その辺の組み立て方も、単に式だけ出されると学生も困るので、ジュールって人がいてこんな実験をしたら結果がどうだった、って物語風なことを入れるといいです。

講義は長いから40分×2と分けて、途中に何かはさむ。

 講義はね、90分って長いんですよ。大学の講義ってなんでこんなに長いんだろうって思うんだけど。まあ、なので、40分×2くらいな感じでやってます。途中では何かいれます。とりあえずやってたのは、眠気覚ましの演習問題とか、毎年同じなんですけど、これは小テスト(写真) 。
 一回目の小テストには、この順で一応やりますよっていう15回分の流れも載せてます。で、授業中に自己採点もしてもらいます、点付けんの大変なんで。これなんか高校の化学の復習ですけど、まあいいんです、気晴らしで。
―気晴らしがてらで。 気晴らしがてら。そういったことやらないとさすがに90分は集中できない。だから、途中で何か工夫すると良いです。演習問題をやるとか、専門に近い場合は研究のトピックを紹介もしたりはします。ただ、あまり長い間やるとちょっと…笑。それなりですけど。あと、授業でやった内容に対応する英語のビデオを流したりする。元の動画を1分に編集したりね、自分でも凝りすぎだと思うんだけど笑。
ーめちゃ手間暇かけてますね笑。

大人だって褒められると嬉しい

―小テストは回収しますか?  回収はしてます。それとは別にコメントカードで感想を書いてもらうんですよ。で、やはり、反響が楽しいっちゃ楽しいんで笑。パラパラ見て、これがよかったとか、色々書いてくれて結構参考にはなるよね。まあ自分の読み物としても楽しいし、「来週から楽しみです」とか「授業でこれを知って驚きました」って結構いい子いるなーとか笑。
 出席を取る場合は、何にも書かないで出すと出席に扱わない、キーワードを書いたら後は自由に書いていいですよ、って言うと全然違うこと書いてくれる人もいるので、それはそれで面白いですけど。そんな感じで感想は書いてもらってます。

 講義の感想を書いてもらうっていうのは、昔、ファカルティデベロップメント*で聞いた、「講義の感想を聞いてコノヤローと思うこともある。確かに、あるんだけどそれはぐっと我慢しろと、自分の講義に落ち度がないかもう一度冷静に考えるといい」って。もちろん無茶なこと言ってくる生徒もいるので、話半分に見ながらも、こうした方がいいかなとかやっぱりあるので、感想を書かせるのは結構重要です。
―レスポンスがあるって大事ですよね。 そうそう。やっぱりその対話が重要なんで、特に80人ぐらいだとなかなか直接の対話は出来ないから。小テストにも感想があれば書いて構いませんとは書いてるんだけど、ほとんど感想ばっかり読んでて、小テストのほうはまあいいんです。自分で丸つけして勉強してくれればいいんで。

 あと、この年になると大体のことはやって当たり前で、ミスすると怒られるとかそういうことが多いんですよ。でも農工大の学生ってさ、いい子が多いので、感想とかもそうだし、「先生面白いですね」って書いてくれて、こんな年になってね、褒められるかと思うとちょっと嬉しい笑。
―それは嬉しいですね笑。 それはよく言ってます笑。でも、やっぱり講義とかの感想で、まあいろんな人がいますけど、辛い人から甘い人まで、まあ面白いですねって言われるのが良いですね。


殿塚先生の「授業百景」vol.2はここまで!
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続いて、殿塚先生の経緯について詳しく教えていただいた「先生ヒストリー」はこちら

* ファカルティ・デベロップメント… 教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称。(文部科学省HPより)

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。