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授業百景

# 第五景 教えないといけないことが多すぎるので、授業時間に全てを理解できなくても予習復習を vol.2

2020.04.09

田中治夫先生の「授業百景」vol.2です! vol.1はこちら


田中治夫(たなか・はるお)先生
生物生産学科

そんなに厳しく言わなくても…

―授業の流れとしては、講義をして最後に小テストという感じですか。 基本は、授業時間の10分とか5分くらい前に終わらせて、こちらがしゃべりすぎた時は短くなったりもします。

 講義のスライドについて、今年の分はやっぱり直前まで直したいし、ぎりぎりまで悩みたいので、基本ムードルに昨年までのスライドはあげてあるんです。昨年の講義を全部あげておいて、それを参考にしなさいって言っています。
―年度ごとのスライドの直しというのは、どれくらいの時間がかかりますか? 色々です。直さないのは2、30分。少なくとも、誤植とか、どうしても論理がおかしいなって所は、授業直後に直します。過去のスライドはムードル*にあげといて、 授業の後に、その日にやった授業のスライドをムードルにあげるんですよ。

 一応細かい技を言うと、過去のムードルは背景なしであげてます。背景つけてあげていた時に、アンケートに「信じられない!背景に色がついたら書き込みができないだろ」って書かれて、そんな人を否定するような書き方しなくてもいいだろうと思ったんですけど…。なので、印刷用の過去スライドの背景は抜いているけど、授業後にあげる当日の新しいスライドは一応色ついている方がキレイなので、背景がついたのをあげています。
―学生は過去のスライドを印刷して持ってきている感じですか。 持ってきている人もいるけど、ほとんどはその場でムードル見ながら受けてます。この前の授業の時は、うまくネットが繋がらなくなったみたいで、授業中にそんな風になったの初めてだったんだけど、「見れないです!」って言われて、でも、それは僕に言われても無理って笑。
 基本的には、過去のスライドとほぼ同じものがスクリーンには映っているので、それで話をして、終わったら、誤字脱字を直したり、口頭でこれちょっとおかしいねって言ったことは修正してムードルにあげる。

授業形式の選択:板書かスライドか

―履修している学生は何人ぐらいですか? 60名くらい。スライドの文字は 最低18ptとか、一応読めるサイズにはしてるはずですけど。

―資料としてすごく充実してますね。 そういうのは、僕は実は思ってないんですよ。パワーポイントでやるときは、結構情報量が多くなるし、文字が多いと嫌われるんですよね。

 私、理想の授業は全部板書だと思ってます。で、学生も変な話、パワーポイントだとついてこれないんですよ。僕自身もそうだったけど、例えば、昔でも気の利いた先生は図表だけ全部コピーくれて、文字は全部板書で、それでも板書の所は書きながらやるので、後から見ても理解できるんだけども、図表の部分は、先生もぱっと説明するので後から見た時にわかんないことってよくあるんだよ。結局この図はどういう意味だったんだろう?とか。
 そういう意味で、私自身の理想は全て板書だと思う。 図も板書できるレベルじゃないと、本来は理解できないだろうと、思ってます。

 ただ、私は板書がうまくないし、字が汚いからね。あと、昔教育実習受けたから分かるんですけど、黒板ってちゃんと使い方があるんですよね。黒板のどこをどう使えとか、一回の授業で基本的には黒板一枚の中に納める用に書けとか。本来はそれができればいいんだけど、さすがにそれは教育実習でやったレベルだから、そんなにしっかり書き方の指導は受けていないし、なかなか難しい。
 以前は板書でやってたこともあったんだけど、教えられる情報量が今のパワポの1/3とか1/4になってさすがに少ないので諦めたんです。これはもうどうせ諦めたものだから、それなら可能な限り情報を多く詰め込む方で行きましょうと。だから、いろんな教科書の代表的な図表を全部引っ張ってきてます。
 もっと人数が少なくて、もっと情報量が少なくて、しっかり理解することを優先に教えていいならば、私は板書で授業をやると思っています。
―確かに、範囲が広いと情報量は多くなりますよね。先端の話というより、基礎を沢山って感じですかね。 土壌学は基本的に基礎の話だと思ってます。先端の話も全くないとつまらないし、興味がなくなるので、幾つかは入れてますけど、基本的には基礎の話だけを入れるようにしています。授業回数15回でピッチピチなので。

図はその場で分かった気になることが多いので文章も加えておく

 スライドは基本的になるべく図表を多く入れています。でも、文字が多いってよく言われるんです、僕自身はこれでも文字が少ないと思うんだけど。
 でも、じゃあこの文章はなぜ入れているかって、図は説明されればその場では分かるし、理解できるんですよ。だけど振り返った時に、何も覚えてないってことが結構多くて、あとで復習したり試験勉強したりするときに文字がないとついていけないってことが多いんですよね。

 だから、文章で残しておきたいところもある。例えば、語句を説明しなさいっていうときに、最終的に文章が書けないといけないじゃないですか。そういう時に、授業では分かった気になってたんだけど、実はわかってないときってある。復習しようとするときに文章がないと難しい。 だから、ある程度まとまった文章でしっかり理解したいときに、手元にあってほしいので、なるべくそういう単語を説明する文章を入れたいなと思ってるんだけど、できてないところもあったりします。厳密に調べるとそれを書くのが一番辛かったりするので。
―たしかに、辞書を作るような作業になってしまいますね。

授業形式の選択:穴埋めか否か

 実は、穴埋めのプリントにして配るっていうのも試してはみたんだけど、結構穴埋めのプリントつくるのって大変なんですよ。
 作ってみた時はプリントが穴だらけになっちゃって、これを出したらかえっておかしいなって思って笑。2,3回ちゃんと挑戦したんだけど、辞めました。
―穴だらけに笑。学生によっても、穴埋めは苦手という人いますね。先生が伝えたい情報を漏らすかもしれない、というのが嫌という。

―全体として、公務員試験を想定しているってかなり具体的なゴールがかかっていて、そこは学生にとってすごく分かりやすいと思います。先生としては、目指している形は出来たら板書だけど、でも情報量が多い分をちゃんと伝えないといけないし、土壌学っていう授業の性質からするとスライドで情報たっぷり、にという感じですかね。 はい。もっと情報を厳選して、この中でも重要なこととそうでもないことが混ざってるから、重要な部分だけやるっていうのも手はあるんだけど、やっぱり公務員試験という出口もあるし、生物生産の中で土壌はちょっと異端というか。―!そうなんですか? はい。土壌学は生物の基本ではあるけど、私の研究室は化学系なんですよ。生物生産は生物系と社会科学系と化学系っていうのがあって、分けると生物系が十何あって、社会科学系が四研究室、化学系はうちしかないから、ちょっと異質と言えば異質です。そういう意味で、幅広く伝えておく必要を感じるので、情報をいっぱい詰めたいんです。植物栄養学も土壌に少し近いとは思うんですけど、それでもやっぱり生物系よりですね。似たような科目がいっぱいあれば、もうちょっと分けて考えられるんだけど。
 もう一人、今土壌物質循環肥料学、まあ基本的には土壌環境学になるんですけど、杉原先生は海外で結構仕事されてる、どちらかというと実例の話とか、特筆的なことをしてくださってるんですね。なので、土壌学の基礎知識は私の授業で最低限全部入れてしまおうという風な感覚でやってます。
―なるほど、他の科目と細分化されてない分、ぐっと量が入ってるんですね。


田中治夫先生の「授業百景」vol.2はここまで!
続いては、農工大の数少ない生え抜き?!田中先生の経緯について詳しく教えていただきました。「先生ヒストリー」はこちら

* ムードル…農工大で使用されている学習管理システム。授業資料のスライド配布やレポート提出などに使われている。ムードルを活用している長岐先生の「授業百景」はこちら。

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。