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授業百景

第二十三景「環境汚染化学」~環境汚染は一般法則で説明できる!本質を見抜く力を身につける授業~

2021.01.29

第23回は高田秀重先生の授業特集です !

今回は、マイクロプラスチックによる海洋汚染研究の第一人者としても知られる高田先生の授業づくりについて教えていただきました!

農学部環境資源科学科2年生向けの授業「環境汚染化学」を取り上げます。


〈プロフィール〉
お名前: 高田秀重先生
所属学科: 農学部環境資源科学科
研究室:水環境保全学研究室 / 有機地球化学研究室
趣味: 世界各国のマグカップ集め

環境汚染学とは

-環境汚染化学について、どのような授業なのか教えていただけますか?われわれの身の回りにある色んな有害化学物質が、どういうところに発生して、どういう風に地球上を流れているのか、最終的に、多くのものは海のなかに入っていくんですけど、それが生物にどういう影響を与えているのか、そういうものの発生を抑えるにはどうしたらいいのか、ということを勉強します。自動車の排気ガスや合成洗剤、プラスチックの添加剤、あと、僕らが直接使わなくても工業用途で使っているものや農薬など、色んな化学物質について理解してもらうのがこの授業の目的です 。

たとえば、合成洗剤の成分ですね。使った後に下水処理場で取り除けるから問題ないんだっていうけど、実際にどれくらい取り除かれるんだろうか、成分によってはどこに溜まるんだろうかとか、そういうことを調べていきます。ただ、一個一個やってもきりがありません。そこには物性(揮発性、水溶性など)に応じた動き方のパターンがあって、一般的な法則があるんですね。法則がわかれば、化学物質の動き方とか、将来的には毒性影響が予測できますから、やっぱりこれは作るのをやめようと、生産する前にストップすることができます。予防的な対応をしていくための化学ともいえますね。

-すごいですね。環境を守るために予防としても応用できるんですね。ダイオキシンや石油汚染、合成洗剤による汚染、環境ホルモンとか、いろいろな環境汚染について説明をしていくんですけど、どれも無関係なように見えて同じ法則で動いているので、それを理解してもらいたいです。なかなか一個一個の説明を聞いたところで、これらを貫いている法則を見抜くことはできないので、はじめに一般的な法則の話をします。そのあとに、一般論を念頭に置きながら個々の化合物の話をしていきます。

最先端を学べる授業のつくり方

ーこの授業はどのように今の形になったのですか?この授業をやりはじめてからもう22年経ちますけど、もともと環境汚染化学という授業はなかったので、0からはじめたんですよ。まずは1年くらいひたすら、それぞれの汚染物質についての本や論文を読んで調べながらやってましたね。ダイオキシンだったら本は10冊以上ありますし、石油汚染でも本は5~6冊あって、結構日本語のものだと限られているので、英語のものも読みました。

本棚には環境汚染に関する文献がずらりと並ぶ

ーちなみに、全部でどのくらいの量の文献になるんですか?本だったら50~60冊にはなるでしょうね。最新の内容は論文になりますから、論文も200とか300くらいになりますね。

ーおおおお。すごいですね!
個々の化学物質についての研究は日々進んでいます。僕が最初に授業をはじめたときには、ダイオキシンや環境ホルモンが社会的に問題になりはじめた時だったので、次の年には新しい発見が出てきて、授業にも新しい内容を入れなくてはいけなかったんですよ。はじめの4~5年は授業の前日は半分徹夜状態でしたね。それは今もあります。

ー今もですか!?
徹夜ではないですけど、昨日も、今日の午前中に授業があったので、最新の視点を入れようということで調べて、結構夜遅くまでやっていました。

ーおつかれさまです…。授業で扱う汚染物質を選ぶ基準はあるのですか?
環境汚染物質を調べる学会のなかでカテゴリー分けされた中から選んでいます。何万種、何十万種という数は授業ではカバーできないので、代表的なカテゴリーについて説明して、そこから法則を理解してもらえば、説明しなかったものもわかるでしょうという感じですね。

環境汚染の現場を科学する

ー実際に授業をされるなかで、伝え方など意識していることはありますか?具体的な事象をもとに説明していくってことですね。なるべく研究とか調査をやっている現場の様子が伝わるようにしています。“現場百遍”っていうのが僕のキーワードで、現場に足しげく通って、そこから情報を引き出すという、新聞記者とか刑事さんの用語なんですけど。うちの父親が新聞記者で“現場百遍”っていうのを口癖にしていたので、同じような考え方でやっています。

授業のスライド資料には調査風景が載せられている

現場に行って初めてわかることってありますよね。排気ガスの臭いがしたとか、下水の臭いがひどかったとか、音であるとか、人の集まり具合とか。現場でサンプルをとってきて、それを分析して結果を出したときに、こういう現場の情報を活用して考察します。

本質を見抜く力

ー高田先生が授業をされているなかで原動力になっているものは何ですか?うちの学科には、環境汚染についてもそれなりの知識や問題意識をもった学生さんが来ているはずなんですけど、それでも結構知らないことが多いということや、表面的には知っているようなことも実は法則に従って動いているということに気がつく人が一人でもいればいいなというところですね。さらにそれが行動変容につながれば、なおさらありがたいです。合成洗剤とかプラスチックとか、そもそも個人が使う段階で注意すれば減らせるので。

ー授業で学んだことを行動に移せるといいですよね!環境汚染についてはそれなりに報道されますし、テレビや新聞でも出てくるんですけど、この授業を通して、少しでも統一的な見方ができるようになってもらえたら嬉しいです。一回法則が理解できると、これから起こることや未知のものに対して考えを持つことができるので、すごく力になると思うんですね。

海洋プラスチックは有害な化学物質を引き寄せる
(私たちはもうそれを食べているかもしれない…)

ーどうしたらそういった法則に気づくことができるのでしょうか?

汚染物質のことに限らず、全体がある一般的な法則で動いているってことを意識して物事をみることができる視点でしょうかね。言い換えれば、個別の事象に対して、特殊なところをそぎ落としていった後に残る一般的な部分を取り出す力ですね。逆に、一般則を展開していくなかで、個別の説明をするやり方がありますけど、それだとなかなか新しい発見は起きないかもしれません。今自然界で起きていることから、共通するものは何かなとみていく。

何が本質かを見抜く。僕らの研究にしても授業にしても、やっていることはそういうことなわけですね。

高田先生の「授業百景」はここまで!
高田先生の研究内容やご自身の学者人生について伺った動画も近日中に公開予定です。お楽しみに!

文章:すだち
インタビュー日:2020年11月05日

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。