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授業百景

# 第十二景 歯ごたえのある授業でじっくり考える力を🤔 vol.2

2020.05.14

内藤先生の「授業百景」vol.2です! vol.1はこちら


内藤方夫(ないとう・みちお)先生
工学部物理システム工学科をご退職され、現在シニアプロフェッサーとして授業を受け持っている。

中間試験の効果

 定期試験で公式集とか配るんです、ノート持ち込み可の時もあるし。でもノート持ち込み可の時は問題難しくするんで、逆に点落ちるんです。で、本当に実力のある人はノートを持ち込んだ方が点よくなるんだけども、中途半端に勉強してきた子はノート持ち込みで問題難しくすると点数下がる。
―ひえー(*_*)笑。 試験は中間と期末があって、中間でひどい点取っても立ち直って期末で取り返す学生がいるんですよ笑。だから、中間はそういう効果があるかもしれないからやってる。「今までダメだったけども、あと半学期頑張ろう」って思う学生がいるらしいから。
―確かに、試験がないと自分がどこまで理解してるのか掴めないというのもありそうですね。 あのね、自力で解くって典型的な定例の問題だったらやったことあるのが出たって思うんだろうけども、本当に自力で問題を解くのは大変ですよ。
 例えば、熱統計力学は一つの体系になっていて、それが全体として頭に入ってればいいんだけども、3年生で初めて学んだ時には、やっぱりポイントポイントでしか入ってないんですよ。で、ポイントポイント同士がつながらないんで、全体にはならない。だから、そこはじっくりやるしかない、っていうかな。
―…全容が分かるためにもポイントは一つ一つ集めないといけないですね。じっくり、ですか。

大学入ってからも伸びるぞ!

―担当されている熱統計力学は、講義科目と演習科目があるんですよね。 講義が木曜、演習が金曜に1コマずつあって、演習は1週間ごと宿題を出して考えてきてもらう。で、授業中に自己採点してもらって、それは成績の一部にする。履修者が70人とかいるので、とてもじゃないけど僕だけでは採点できない。
―採点も大変なんですよね(*_*)

―ちなみに、講義の授業1コマはどのような流れですかね。 ほとんど1時間半喋りっぱなしですよね。まあ、プリントに沿ってしゃべっているので、学生も板書よりはたぶん頭に入ってきてるんじゃないかな、と思います。1単元とか区切りのいいところを1コマに当てて、でも1週間前のことってそんな覚えてないでしょ。だから、最初にちょこっと復習は入ってるんですけども。大体一回ごとに納まりがつくような形で、やってます。
―演習の方はどのような感じですか? 演習の方でも、なかなか難しい問題を出すんで、1週間かけてやってきてもらうんだけど、学生は熱統計力学だけやってるわけじゃないので、やっぱり大変だと思う。けれども、自力で問題を解くっていうことをアクティブラーニングと言うんだったら、そういう訓練をどこかでしなきゃだめだな、と。
 だから、学生は授業を聞いて内容を頭に入れる、吸収するっていうのは得意なんだけど、逆に吸収したものを頭から出す、問題を解くときに発揮できるかっていうのは、また難しいんですよね。苦手な人の方が多いように思う。

 まあ、意欲は持っててほしいっていうのかな。中には不本意な形で農工大に来た学生もいると思うんだけど、授業のレベルは高かったね、って思われるような風にしたいなと、それは常々思ってきました。
―農工大を好きになって卒業してもらいたい…ですよね笑。 うん。研究でも、人がやったことをそのまま真似して論文になるわけじゃないので、必ず自分の発想をどこかに入れないといけないんだけども。その頭から出すっていう方向の考え方ができるように、成長するかどうかっていうのは見てると分かる。研究室の中でも、伸びたなーって学生がいますから。

名著とプリント

 『量子力学』は僕が学生時代に買ったから、今はこの表紙じゃない。45年ぐらい前か笑。
―初版が1952年ですね(゜゜) 朝永先生って知ってる?
―正直聞いたことないです…。 ノーベル物理学賞とったの笑。湯川先生が最初にとって、その後の2人目なの。
―勉強不足がバレますね笑。 で、キッテルの「熱物理学」は教科書にしてる。これも本当は英語で読んだ方がいいんだけども笑。ただ、高いんでしょうがないね。僕あんまり日本語のこの本は読んでないんで、あんまり汚れてない。英語の方がずっと読みやすい。
―そうなんですか(゜゜) 海外にいらっしゃったことがあるんですか? スタンフォードに2年半いましたから。もちろん英語が難しい本もあるんだけども、キッテルは英語が易しい。

 これは第12回プリントで、大体6ページぐらいです。赤字は自分が喋んなきゃいけないなというところです。
―授業中、学生はこのプリントを手元に、先生もこれに沿って、補足も聴きながらという感じですか? はい。学生はノートも持ってきてます。試験でノート持ち込み可にするときも、プリントの持ち込みはダメにしてる。それをもう持ち込まれるとかなり解けちゃうので。
―笑。 持ち込み可になるのは、ノートだけです。
 プリントと別に、講義ノートも作ってるけど、それはプリントより更に詳しくて、自分がこの本を読んでまとめたいところをまとめたもので、かなり分量多いです。やっぱり、講義ノートがない状態で喋るだけの能力はもうないですよ笑。―いえいえ!笑 その、難しめな本を読んで、自分的にここはまとめたいなというノートですね。 あと、なるべく絵と図を多くっていうのかな。文字よりも、漫画・絵みたいなもののほうが頭に残りやすい、少なくとも僕は。

難しさを噛み砕く過程が講義に

―ちなみに授業の準備ってどれくらいかかりましたか? 最初に熱統計力学の講義を始めたときは、それなりにかかった。どれくらいかかったかな、まあ、1学期間かけて講義ノート作りましたよ。だから、かなりの時間費やした。僕はここに15年ちょっといたんだけども、その間に物理の力学、電磁気学、量子力学、熱統計力学って主要科目はほとんど教えてるんですよね。だから、それぞれに対して、同じぐらいの厚みで使えるような資料があります。
―わあ(゜゜) まあ僕自身、研究は好きなんだけども笑、授業は嫌いじゃないというか。特に、よくついてきてくれる学生がいる学年はやりがいがある。

 やっぱり基本的にね、どの本を使って講義ノートを作るかって、とても重要!さっき言ったように、最近の中途半端にやさしい本で講義ノートを作るっていうのは、僕はたぶん作れないと思う。難しい分には、講義ノートを作る段階で僕が噛み砕けばいいんで。
―面白いですね。やや難解なものの方がいいというのは。 学生には、芯のあるもの、芯のある本を読んでほしい。パッと読んですぐには理解できないけれど、じっくり時間をかけて理解するっていうことを体験してほしい。教科書や参考書も、僕ら先生が読んで、これは読む価値があると判断して設定しているんですよ。

力学:『力学』原島鮮著,裳華房
電磁気:『バークレー物理学コース 電磁気』飯田修一監修・翻訳,丸善出版
量子力学:『量子力学』朝永振一郎著,みすず書房
熱統計力学:『キッテル熱物理学』山下次郎・福地充共訳,丸善出版

―こちらが、内藤先生的名著ですか。 講義をやるには重要な本。自分が最初に読んだときの印象も、今言った本はとてもいいんです。難しからず、易しからず。改めて読んでみると結構なレベルの本ですけどね。
―そうなんですね…。本が離乳食化してるって言ってらっしゃる先生(林修さん)*もいますね。噛み応えもないし注釈もないし、読んでる気がしないみたいな。 ほんと。昔の名著はありますね。ただ、そんなに昔の本ってのは、ずっと売られてるわけじゃないので、まあ残っている本があると、我々としてはやりやすい。

最後に

 やっぱり授業に関して言うと、僕は個性があっていいと思うんで、みんな同じようなタイプというかクオリティ、量でやる必要はなくて、それぞれの個性があった方が楽しいと思いますよ。
―はい!…その通りだと思います。授業に色んな形や種類があるっていうのは、学生にとって生息地がいっぱいあるみたいな、イメージがあって。 はっは笑。
―水辺がいい生き物がいれば、山がいい生き物もいるように、いろんな先生の授業を受けて、この授業は合うなーこの分野楽しいなーっていうのが見つかると学生にとっていいかな、と。無理をしてまで、画一化されない方がいいかなと思います。 僕もこの講義ノートを大きく変えるだけの、もう意気込みないですね笑。
―いやいや!すでに相当、洗練されてるんじゃないですかね? 最初に作った時は、かなり苦労して作ったんでいいです。
―いろんなやり方がある方がいいと思うので、全然!


内藤先生の「授業百景」vol.2はここまで!
続いては、内藤先生の経緯を詳しく教えていただきました。
内藤先生の「先生ヒストリー」はこちら

* 『初耳学』2017年6月25日放送の回にて

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。