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授業百景

# 第十景 知ってるぞ、は分かってる? &自分との対話が学びを深める☕ vol.2

2020.05.14

嘉治寿彦先生の「授業百景」vol.2です!
vol.1はこちら


嘉治寿彦(かじ・としひこ)先生
化学物理工学科

これまでの力学が濃縮されていた

 実はこの物理学基礎Ⅰは今年の1年生から新学科になったので、今回が初めてなんです(2019年にインタビュー)*。だから、上手くいってないところも実は自覚はしていて、ここら辺(アンケートの改善案の欄)を見て、ああ確かにそうだよな、って思いました笑。
―今、創立期なんですね笑。 はい笑。ただ、一方で力学の授業自体は、去年まで持っていまして、力学Ⅰと力学演習という二つの授業を持ってたんですよ。それぞれの授業でちょっと形式を変えてディスカッションの時間も取っていたので、今年度はその二つを上手く半分以下の時間になるようにして混ぜなきゃいけないなっていうので、やってるんです。
 しかも、もともと物理システム工学科では、力学Ⅰ・力学Ⅱ・力学演習、遡ると力学入門というのもあって、力学は科目が4つあったんですね。で、そのうち2つを担当していたんですけど、今年度(2020年度)から化学物理工学科というのになって、今は力学の科目が1つしかないということなんですよ。
―ええ(゜゜)! その4つ分を1科目でやるということで…どうやってやればいいのかな、とちょっと試行錯誤しつつ新年度、まあ、学生によかったって言っていただいて、すごい嬉しい反面、でもなかなかうまくいってないところあるよな、と思ったら、やっぱりピンポイントで、そう書いてあったので皆さんちゃんと見てるなと思いました笑。
―そうだったんですね笑。かなり圧縮されそうですね。 ええ。なので、映像を見せるとか、ディスカッションするっていうのも…去年は例えば、力学演習の方では、毎回宇宙関連の映像見せたんですね。で、一方で、力学Ⅰの方では映像を見せないで、毎回何かしらお題を出して、ディスカッションをしてもらったんですね。それが今年は交互に、上手く混ぜるというか試行錯誤ですね。

ディスカッションの形式も一長一短

―授業では板書で、という感じですか? はい。基本は板書です。
 ディスカッションの時には、出席簿代わりのA4プリントがあってそれを配ります。それもちょっと試しているんですけど、今年度はそれを1人で書いてもいいし、6人まで好きに集まって書いてもいいって言ってますね。

 実は去年まで、力学Ⅰの方ではグループごとにディスカッションしてもらって、力学演習の方では1人1人でやってもらったんです。そうすると、1人の方が生き生きとする学生さんと、どっちでも生き生きする学生さんと、グループだと生き生きする学生さんといるんですね笑。

 そこはどちらがいいか悩んだんですけど、今年は好きにしてもらおうということで1人でも好きな人同士でもOKという形にしています。結果、毎回1人がいい人と、1人になったりグループになったりする人と、やっぱり分かれます。
 それぞれ考えた内容は紙に名前と一緒に書いてもらって回収します。一応、何を書いてくれたかは目を通してますけど、1人でもグループでもいいってやり方なので、そこから直接の何点何点ってつける気はないです。それをつけちゃうと、色々問題出てきちゃうんで笑。
―確かに、難しそうですね笑。 あくまで、ディスカッションに参加したってことは評価に入れますけど。
 一応、今だと学生90人ぐらいで、ディスカッションしている間はぐるぐる教室の後ろまで回って様子は見るようにしてるんですけど、やっぱり一人で黙々と書いている方がやりやすそうな人と、楽しそうに話している人と色々ですね。

―ちなみに、教室を回るときに声をかけたりはしていますか? 極力余計なこと言わないようにしてます。やっぱり教室が大きいからですかね、後ろの方に行くと向こうから聞かれることが多いな、という感じですね。「今やってること、これでいいんですよね?」みたいな、あとは「こういうこと話しててもいいんですか?」とか。それはもちろん答えます。

講義と演習で連携中

―他の先生方の授業は見たことありますか? はい。量子力学演習っていう演習の授業も物理システム工学科で担当しているんですけど、畠山温先生が担当している量子力学Ⅰっていう講義とセットなんですね。だから、その量子力学Ⅰがどこまで進んでるかな、というのをできるだけ、毎回自分も出席して見ています。
―そういった取り組みはいつからされているんですか? 3年ぐらい前からです。その方がお互い都合がいいので笑。演習の授業をするときは、畠山先生ずっと見ていらっしゃいます笑。
―そうなんですね(゜゜) 緊張とかしないですか?  たぶん、多少はありますけど、でもそれ以上にちょっと、むしろ手助けいただくことの方が多いですね。
―なんだか、素敵な関係ですね!笑。 そうですね、僕が畠山先生をなんか助けられるところはほとんどないと思いますけど笑。畠山先生はすーごい授業を工夫されている方で、結構毎年授業形式が変わるんですよ笑。
 僕の前に演習を担当していた人の時は、最初に演習やってから講義をやる、予習しないで演習をするっていう、逆転授業ですかね。まず、教科書も何も読んでない状況の学生にいろいろディスカッションしてもらって、ディスカッションしてもらった内容が、上手くその授業でやる内容に結びつくように、っていうので、やられていたんですね。今はまた、逆転授業はやめています。
 理由は、畠山先生が量子力学の教科書を書かれて、教科書がある状態なので、予習するなって言うのもおかしいよな?っていう話になって笑。
―確かに、予習を促す側ですもんね笑。

 それで、去年から復習形式で、講義の後に演習で復習のディスカッションしてもらうっていう形になったんです。時間割として、講義 → 演習だったので、講義授業90分の直後に、その復習でいろいろディスカッションして下さいって言ってたんですけど、その年の学生さんのアンケートで意見が多かったのが、「話を聞いた直後にディスカッションしようと思っても、なかなか頭が整理されてないから、時間が欲しい」っていう笑。
 それで、今年は逆にしようっていう話になって、演習 → 講義の順で、連続の2時間なんですけど、演習の時間は先週の講義内容をやるんですね。それなら1週間経っているから、考えたい人は十分考えられるし、分からなかった人は分からなかったことが明確になっている。演習の時には班分けをして、講義で分からなかったことや考えてきたことを発表してもらうんです。

 こちらとしては、「ああ、こんなところで引っかかってたんだ」とか、「あ、こういうところまでこの人は考えるんだ」っていうのが分かって、教員の側にとっても都合がいいというか、勉強になるんです笑。
 おそらく参加している学生さんとしては、「疑問点が明確になってよかった」と思う人、「授業で充分分かったんだけど暇だな」という人、「結局うちの班に分かる人いないからディスカッションしても分かんないんだよな」みたいな感想を持っている人は、それぞれいそうな雰囲気がしています。
―…なるほど。 ディスカッションの時間、といっても量子力学演習のディスカッションと、自分1人で受け持ってるの力学Ⅰと力学演習で、それぞれ違う形式のディスカッションをしてみて、どれも一長一短で難しいな、って思ってるところです笑。
―わあ、色々試行錯誤されているんですね。

ディスカッションの試行錯誤

指示はどこまで、主体的にどれだけ

 あと、ディスカッションの時間を取ることに、意味があると考える学生もいる一方で、時間の無駄だと思っている学生も多少いるはずで、どうしてもそれは生じてしまうのかな、と思います。板書の時も同様に、どこにターゲットを絞るかが難しいですね。
 例えば、物理学基礎Ⅰで、これは習ってますか?知ってますか?って、時々手を挙げてもらってるんですけど、意外と知ってる人多いな、逆に意外と知ってる人少ないな、っていうのはあるんですよね。
 でもやっぱり2、3人、他の人が当然と思っていることを知らない人もいて、一方で、力学だと項目だけ見せると知ってるよと思う人が大半っていう場合も多いんですね。だから、全然知らない人に合わせて授業すると、多くの人が退屈しますよね。かといって、大半がこの項目を知ってるって手を挙げている方に合わせると、実は分かってなかったとき多くの人がダメなので、両方フォローしながらというのは心掛けてはいますが、バランスが難しいですね。

 物理学基礎Ⅰの授業のディスカッション形式は、たぶん今の通りで良いのかなと思っています。自分達から班になってる人たちは好きで集まってるから、話はそれなりに盛り上がってる場合が多いです。一人で黙々と、むしろ班になってる人よりもびっしりと書いてくれる人たちも結構いますし。どちらかというと、講義の中で少し話したい人が話せる時間を設ける、というくらいでそれほど重きを置いていないのでいいんだと思います。

 ただ、演習でディスカッションをする場合には、ディスカッション自体が授業のメインになるので、そうした時は、班分けを指定するかしないかで迷いますね。指定したほうが、やっぱり無理やりにでも話す環境は作れるので。
 その一方で無理やり指定されてるから、学生さんからは隣の班のあいつがいたら、自分はもっと楽だったのにっていう不平がたまると笑。それは良し悪しですね。
―それは…学生がわがままですよ笑。 笑。
―学生もやっぱり自分で考えないとダメじゃないですか笑。そういう愚痴が漏れるのも分かりますけど笑。 やっぱり、それは机回ってると聞こえるんです笑。なかなか難しいのは分かるんですよね。自分も学生の時を思い出すと、曖昧な指示で「じゃあみんなで話してください」って言われても何話すんだ?分からないから分からないんだよ!とか笑。それは思って当然だよな、とは思いながら。
―問いを立てるというのも簡単ではなさそうですね。

 それで、量子力学演習の方では最初に15分ぐらい、シミュレーションを見せたり、あるいはシミュレーションの動画を見せたりして、それについてディスカッションしてもいいし、先週の講義や宿題に関して話したりしてもいいので、必ず各班発表してください、というやり方ですね。量子力学演習の方で、シミュレーションや動画を見せるのは、去年から始めたんですけど、あんまり評判よくないんです笑。

 力学の方で一昨年からやってる宇宙ステーションの動画は、英語でもかなり好評だったんですよ。それは、自分が知ってると思ってたことが知らない状態で見せられて、且つ宇宙っていわれるとちょっと面白いな、って、興味が単純に惹かれると思うんですよ。対して量子力学でなかなかそういうものは用意できなくて笑。シミュレーションの動画ばかりになって、さらに英語で見せられると、「英語で何言ってるかわけわかんないし、そもそもわけわかんない絵が動いててつまんなかった」とかって、同じ形式のつもりでこっちはやっていてもそういう感想になるんです笑。
―なるほど笑。 それが去年のことで、今年も同じく量子力学演習で同じ動画を見せているんですけど、見てるとそこまで評判が悪くないですね。だから、そこはなんでだろうな、と。
 これは推測ですが、分かる学生が一部いて、その人たちが動画を見た後にコメントしているから他の人たちもなんとなく分かるのかもしれないですね。去年は動画とかシミュレーションを見せた後、全体に対してコメントがある人?て個人単位で講義内容に絞って聞いてたんですよ。そうすると大体固まっちゃうんです笑。
 で、今年はそういう部分をなくして、動画見せた後に班ごとディスカッションに分かれてもらって、動画についてでも、講義や宿題についてでも、自由に話してもらってるんです。動画やシミュレーションに関して盛り上がってる班もあれば、そっちはピンとこなかったけど、宿題に関して相談している班とか、お題が自分で選べてるから、どうにかなっているのかもしれないですね。
―学生に委ねていますね。

アクティブラーニングの疑問

 ただ、ちょっと悩むのは全部ディスカッションにすればいいか、って言うとたぶんそうでもないんだろうな、というのがあって。
―はい。そうだと思います。 だよね。なんか、アクティブラーニング**っていうのを、すごい推すのはまあ正しいんですけど。一昨年、同じ化学物理工学科の香取浩子先生から、物理教育学会のシンポジウムがあるから興味ある人は聞きに行ってくださいって紹介してもらったので、聞きに行ったんです。

 それは、アクティブラーニングについてのシンポジウムで、それで聞いてたら、アクティブラーニングをこう工夫してますって先生たちがいる中で、1人、「アクティブラーニングはさんざんやったけど辞めました」っていう先生がいて笑。
―え(゜゜)! その先生が仰っていたことすごく参考になりましたね。その金沢工業大学の田中忠芳先生が、「対話は必要なんだけど、その必要な対話は、誰とであってもいい。なので、1人で自分との対話でもいいし、隣の人との対話でもいい。その対話を増やす、その工夫をするんだったらアクティブでもそうでなくてもいいんだ」って、仰っていて、それはすごく、一番納得できましたね。アクティブかそうでないかって話の中では。
―…なるほど。その…私もそう思っていて、アクティブラーニングって名前が変だなと。 笑。
―アクティブって活動的か否かで判断されている気がして、でも能動的って意味なら対話でもコメントカードでのやりとりとか、レポートでもできると思ってます。なにか椅子から立って動かないとアクティブじゃない、みたいなのは違うかなとは思っています。能動的学習って日本語でいいじゃん、と思います。でも、金沢工業大学の先生のお言葉、すごく分かります。 そうですね、その話が一番納得はいったんですけど、なかなか難しいですね笑。
―いやいや!「自分との対話」というのがびっくりしました。確かに…面白いですね。


嘉治先生の「授業百景」vol.2はここまで!
続いては、嘉治先生のこれまでの経緯について詳しく教えていただきました。
「先生ヒストリー」はこちら

* 東京農工大学工学部は、2019年度より8学科から6学科に改組があった。嘉治寿彦先生の所属していた化学システム工学科は、化学物理工学科へ移行となった。また、担当していた物理システム工学科の授業についても、物理システム工学科が2019年度より生体医用システム工学科と化学物理工学科へと移行した。

** アクティブラーニング…学修者が能動的に学習に取りくむ学習法の総称。
座学中心の一方的教授方法では身につくことの少なかった21世紀型スキルをはじめとする汎用的能力、ひいては新しい学力観に基づくような「自らが学ぶ力」が養われることが期待されている。アクティブラーニング型授業と呼ばれるのは、発見学習、問題解決型学習、体験学習、調査学習、グループディスカッション、グループワーク、ディベートを取り入れた授業とされる。

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。