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授業百景

# 第七景 国家試験が待っている。 予習は必須、獣医学の原点から現場の実例まで追体験🐄 vol.2

2020.04.09

K先生の「授業百景」vol.2です! vol.1はこちら


K先生は希望により、イラストでの登場です。イラストは、K先生の居室にあったアフリカ土産のすらりとした木彫キリンがモチーフです!

スライドあれこれ

 学生は講義に教科書を必ず持ってきて、Moodle*にアップしてある講義資料を自分でプリントするかパソコンで書き込めるように準備して来てます。教科書には載っていないけれど、私が必要だと思って加えているのが講義用の資料です。私の講義の写真を撮るのは自由にしていて、あくまで自分で見るだけにしてもらう。

 スライドにある緑文字の部分が、学生に配布する分は穴あきになっている。内容はほとんど教科書ですが、その中で大事なところは強調して、学生は一生懸命ラインマーカーで線ひいたりする。

学生にデータで配布しないが写真は撮ってもOKなスライド

 このスライドは250年前、獣医学ができた当時の牛疫と言う病気が流行していた頃の話だけど、今も変わりませんよと、病気が出たらこんな対策をしていますという話。教科書のベーシックな話の間に、こう言うスライドを入れたりしてる。

 あと農場HACCP(ハサップ)とか食品の安全の話も含めて、一般の本の紹介をしています。
―参考書みたいなことですね。 そう。教科書でやるだけじゃなくて、自分で実際の事件を扱ったような本を読むと、ドキュメンタリーとしても読めるし、どういう理由があって何が起こったのか、経営者の管理も必要だし行政も悪かったっていう、ハサップの弱点が全部紹介されているから、読んでおくといいよと。中には読む学生もいます。

獣医学の始まりも最近も、どうやって人類の食べ物を確保するか

 牛疫の話。牛は口蹄疫では死なないけど、牛疫ではばたばた死んでしまう。だから、大変だっていって、フランスで牛が死なないような学問が必要だからと作ったのが獣医学のはじまりだった。リヨン医科大学に、獣医学を作ったのが1761年。牛は重要な食べ物で、2億頭も死ねば、地球上からいなくなってしまう。だから、獣医の一番先の目的は、人の食べ物をどう確保するかいう発想から始まっている。で、農工大もそう。この時のスライドだと、他には豚コレラの話題も紹介しました。発生したのが2018年9月で、後期の授業が10月から始まるから。
―かなりタイムリーな話ですもんね。 うん。あと、教科書の表についてコメントを入れて、自給率が下がってますよとか、教科書に説明は文字で書いてあるかもしれないけど、それだけじゃなくて実際に該当のグラフを見せる。昔はお肉をそんなに食べなかったから、生産性は低かったけど、自給率は高かった。
―へえ!

 だけど、今はみんなが当たり前に食べるから、生産性が同じでも自給率は下がっていて輸入が多くなっているっていう話をしている。こういう話には、新聞や週刊誌とか、もちろん農水の資料からグラフや表も使っている。ただし、学生に配布しているのは、農水省の資料に限ります。
―色々なところから資料を持ってきているんですね。

獣医学といえば…

 さっき説明したように、獣医学は牛疫を何とかしないといけないっていうことが始まりで、牛は産業動物と言われ、それを人に例えると食糧になります。公衆衛生関連では、サルモネラとかO157食中毒とかあるけど、それは人間にしてみれば医療です。小動物は、人間がそれを飼うことによって癒される、だから福祉になる。もちろん、高度医療にもつながっていますが。
 だから、人間社会と獣医社会っていうのはこういう形でつながっていて、今みんな獣医さんっていうとペットの獣医さんとしか思いつかないかもしれませんが、本当は人類の食糧確保がスタートだという話を学生にしてます。

研究の話もちょこちょこ

 あと、自分で実際にやったこと、例えばカモの調査をした話とかもします。

―写真がいっぱいで、いいですね! この辺はただ学生は聞いているだけだけど、まあ面白くなるような話をしている。
 これは、緑の太陽マークだから、正面のスクリーンには映るけど、学生の手元にはないスライド。興味のある学生、大事だと思う学生はそれを写真に撮っていい。
―情報量がすごいですね…。スライドは何枚ぐらいありますか? 多いですよ。えーっと、1コマの講義で60-70枚ぐらいです。
―おおお。改めて、やっぱり獣医ってすごい大変というか… 全部の授業がこれをやると、ひょっとしたら学生はもたないかもしれない。というのは、これ3年生ですけど、私は1限で遠隔講義システムを使って、農工大だけでなく、岩手大の学生にもリアルタイムで同時に講義しています。2限が人獣共通感染症で岩手の先生方がやる。
 先生方の皆が「2時間ずつ予習・復習をやってください。」と言った時に、2コマの講義の準備では4時間分の予習復習が必要で、午後に実習が入っていれば、帰宅してから時間が無くなる。獣医学の時間割では、午後は基本的に実習が毎日月曜日から金曜日まで。午前中は講義で、午後は実習です。

怒涛の暗記科目

 こういう暗記科目をどう面白くすれば覚えられるか。特に授業に限っていうと、原理とかではなしに覚えなきゃいけないけど、それだけではかわいそうだな、と。
 例えば、「口蹄疫」について、その原因病原体としては、ピコルナ科○○ウイルス属の、で、それはDNAウイルスか、RNAウイルスかとか、プラス鎖とかマイナス鎖かとか、消毒薬は何が効くか、で、病気が出た時に潜伏期間が何日で、っていうのを覚える必要がある。他にも、解剖学では、骨の話でこれは橈骨(とうこつ)で尺骨で、腓骨(ひこつ)・脛骨とか、筋肉では起始停止だとかを、覚える。大変だと思う。

 自分が学生の時に授業を聞いた限りでは、そういうことをいかに面白く教えるかっていうのは大事だなって思った。その頃はスライドなんかないから、ある非常勤講師の先生は「おはようございます」って挨拶したとたんに、黒板に向かってずーっと書いて学生はひたすら写す、っていうのが普通の授業。それを変えられないかと思った。
 だから、他の科目でも暗記主体の内容をどう楽しく教えるかっていうのは、苦労してるだろうな、と。正解はないと思う。
―そうですね。きっと正解というのはないですね。 それぞれが自分に合ったやり方で、やってるだけで、私のやり方を押し付けるっていうのは、違うと思う。みんなにこれがいい、とかって言えない気がする。
 あくまで一つのやり方として、こういう風にやってます。


K先生の「授業百景」vol.2はここまで!
続いてはK先生の経緯について詳しく教えていただきました。
「先生ヒストリー」はこちら

* Moodle(ムードル)…農工大で使用されている学習管理システム。授業資料のスライド配布やレポート提出などに使われている。ムードルを活用している長岐先生の「授業百景」はこちら。

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。