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授業百景

# 第十三景 農工大生はアーティスト!授業を通して、Innovationに気づく力をトレーニング 💪!vol.3

2020.06.10

千葉先生の「授業百景」、今回はこだわりのスライドを見せてもらいながら研究とイノベーションの関係を教えてもらいました!必見です。
これまでの千葉先生の「授業百景」はこちらから→ vol.1vol.2


千葉一裕(ちば・かずひろ)先生
応用生物科学科(2019年度まで)

CHIBA’s SLIDE COLLECTION

 スライドで言うと、表の配置、色づかい、キャッチーなコピーができたかどうか、すごくこだわってる。それは、学生にとっては、ぱっと見で変わりないかもしれないけど、自分自身のモチベーションをあげるためにはすごく重要。
―なるほど、自分のモチベーションもありきで… ありで。自分で作ったのを見て「うわぁ、キレイだ、このスライドは!」って思います。自画自賛で、楽しい。それって通じると思いますけどね、見ている人に。
―そうですね笑。通じると思いますね。 ねえ。―自慢のスライドとかってありますか。 はい、沢山あります。―ぜひ見たいです!スライド作りでは、文の頭をそろえるとか、フォントをバラバラにしないとか、基本的なことに気を配ってって感じですかね。 すごく重要。言いたいことは必ず一行ごとに終わるようにするとか。
 それは教わったのではなくて、自分なりに、見る人の立場になって考えたり、あるいは他の人のプレゼンを見て、文字数多いなとか、字の大きさが小さいなとか。意味もなくいくつも色がちりばめられているなとか、それより青系統の3系統だけを使う方が知的できれいに見えるだろうなとか、あるでしょ?濃い青、薄い青の方が、キレイだしスマート感が出る。赤や黄色や緑やピンクを散らばしたら、いったいどこを見ればいいのだよってなるでしょ。―そうですね…。1行で終わらせないで、スライドに、文章がブロックでゴツーっと20行ぐらい入ってるとか そうそう。
―他の人のを見ながら、こうした方がいいなって自分のを磨く感じですね。 そう。
―アンテナを張れる人はするするできるようになっていくと思うんですけど。 そう思いますよ。単純だけど。

 これは農工大のホームページにある写真などを集めて1年生向けに作ったスライドだけど、農工大農学部ってこういうところですって話をする前の、前置きに使いました。見た瞬間に、いい大学みたいと思ってもらえるように並べます。

必見 👀 スライドの仕掛け

 あと、「これはいったい何年に起きたことでしょう?」って学生に聞いたの。何年前ぐらいだと思う?
―マイケルジャクソン死去…7年前とかですか? これ10年前の話で、マイケルジャクソンが亡くなったとか、色々あったでしょ。
―あっという間ですね… ね、あっという間でしょ。それで、「じゃあ皆さんこの10年何してきましたか?」って聞くの。
―うわー!ですね… 巧いですね!ドキッとしますね。急に自分ごとに笑。

 例えばケネディ大統領は1963年に暗殺されてしまいました。だけど、彼は1961年に自分達は月に行くって発表していて、その月に行く理由が、「Because they are hard.」それは困難だからやるのだ、とカッコイイでしょ!

 簡単だったらやる必要がないって言って。ケネディ大統領は思いを遂げずに亡くなったわけですが、8年後に、この状態(アポロ月面着陸)ですよ。これ重要なのです。だから、10年間で行くぞって宣言したことがいかに大事かっていうこと。
 だから、あなたは10年後にどうなるかって考えましたか?っていうところから始まってくる。
―すごいですね…考えさせるというか、問いの出し方がめっちゃいいですね! ええ、これ授業で使いますよ、これは。

―…なるほど、確かに10年があっという間って言われて、その時は他人事ですけど、それが急に、自分の10年ってなった時にハッ!ってなりますね。 だよね。

 あと、これは私の研究だって紹介するのですけど、これ研究の意味を理解させる必要はないんですよ。ないけど、これが私の最先端の論文だし、こういう感じのことですよっていうと、ぱっと見で研究、化学反応が何にも分からなくても、なんか凄そう!って。
―印象として残りますね。 ねえ。さらに、これもですよって言うと、この構造式はとても複雑だ!って「これうちの研究室に来たら、自分自身で作れるようになりますよ」っていう話をする。そうすると、え!自分がそんな力をつけられるの?と思ってくれるのではないかと期待しています。
―…私もできるの…?ってなりますね笑。 そう、えっ?て思ってもらうだけでいいと思う。それがサイエンスを学ぶきっかけということだと思います。
―なんか、見せ方がテクいですね。

そばに!革新が!あるかぎ~り~

 これ、僕が始めた会社で作った化合物、例えば1グラム○○万円ぐらいなんですが、買っていただけるものでしょうかと聞いたとき。相手(ベンチャーの社長)に「何で貴方から買わなければいけないのですか?買いません。」って言われたときの写真、いいでしょ。
―!? 断られたときに、「でもでも、じゃあ写真だけでも!」って言って、これ(写真)が残っています。これが後々活きるんですよ、こういうスライドに、この話が笑。

 それで、なんの話かって言うと、我々は価値のあるもの(化合物)の合成はできるけど、それに対して実際に○○万円で買っていただくのは難しいって話ですよ。じゃあ、どうすればいいか、このギャップを埋めることがイノベーションですよ、実は。

―サイエンスがあって、ビジネスがあって、間にイノベーション… そう。経済的な価値を生み出さないと、なかなかイノベーションとは言えない。ただこれを作ることだけ、ならできるけど、問題は他人がその重要性、価値を認めるかどうかです。―あの、ずっと前に富士通が指紋認証をやってはいたけど、iPhoneが出てからやっと、イノベーションだって流通したというか、売り出し方とか、お金が発生するためにもう一段階要るみたいな。 そう。例えばね、化学者はね、僕もそうなんだけどね、「世界で初めてです」って自慢するの、「とても操作が簡単です」、さっき「あなたでもできます」って言ったでしょ、「特許取ってますよ」、「様々なものに応用できますよ」、って。
 これ、サイエンスの世界ではOKです、いい論文にもなりますが、それだけでは他人様は商品としてのお金は払ってくれないです。
―ああ… ね、実はそれを知らなかったのです、僕も。

 お客様って、価値を認めてその適正な対価を出してくれる人ですね。一体誰がこれにお金出すのって考えてみると、意外とお金を出してくれる人いないのです。世界初って言うと凄そうだけど、一般にはそれだけではお金を出してくれないですよね。ここに気づくことは大事かもしれない。
 世界初は分かったけれど、なんで私があなたにお金を出さなきゃいけないんですかってなる。ピンクと黄色と、紫が同時に出る色鉛筆を作りました、世界初ですって言っても、何でそれを私が200円で買う必要があるんですかってなる。その答えを示さなければならない。
―たしかに笑。 これ!大変でなかなか教えてくれないけど、このセンスも僕は学生に身につけてもらいたい。だって、皆さんはやがて社会に出るでしょ。だから、公務員になっても企業人になっても、結局社会で活躍するって何かっていうと、自分以外の人に認めてもらう覚悟がつくということがすごく大きい。

 それは、単に世界初っていう以上に、もっと何かがないと認めてもらえない。実はそういう世界を作り出せるのは、サイエンスをやっていた人が一番近いと私は思っている。だからこそ、農工大生は、その世界に広がる素地があると思っているわけです。そうすると、学ぶ意味が分かってくるでしょ。自分がそういうインパクトのあるものを、Impact on Societyね、「社会へのインパクトをもたらすことのできる人間になるために、今日も授業を受けている」と思うと、意味がまるで変わってくるのですよ、今日授業に出る意味が。
―かなり違いますね。 ねえ、そこの理解なくして、本当は充実した毎日の授業なんてないんじゃないかと思って。
―なあなあに過ごしてしまいますね。 そう。あーこれ覚えれば単位がもらえるかなという世界になってしまう。楽しくないよね、それだけでは。


千葉先生の「授業百景」はいかがでしたでしょうか?
千葉先生が農工大の先生になるまでの経緯についてお聴きした「先生ヒストリー」はこちら


※ 千葉一裕先生は2020年度より、東京農工大学の学長職に就任されたため、担当されていた授業は他の先生が受け持つことになります。