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授業百景

# 第十三景 農工大生はアーティスト!授業を通して、Innovationに気づく力をトレーニング 💪!vol.2

2020.06.10

千葉先生の「授業百景」vol.2です!vol.1はこちら


千葉一裕(ちば・かずひろ)先生
応用生物科学科(2019年度まで)

失敗や事故を知る、知恵になる。

 あとは、化学にまつわる話、自分たちの失敗談なども話します。とんでもないなってことも笑。それによって臨場感が出るでしょう。思わぬことが起こってしまった事例とかも、後から聞けばなぜ起こったか、それはそうでしょって分かるけれど、それでも知っておくことは知恵になる。賢くなる。化学の失敗など実践的な話をすると、自分達でもやりかねないな、と感じる。そうすると教科書の内容が別世界ではなくなる
―確かに、教科書って書いてあることは別世界感あります。

疑問や違和感を持つ感覚を研ぎ澄ます

 じゃあ、今日はまたいい香りの話も授業でしたけれど、そうすると香料を作る人になりたいっていう道も見えてくるじゃない。では、どうやったらいい香りをかぎ分けられるようになるかって、例えば、ワインのソムリエ。どうやったらソムリエになれるかってなかなか教えてもらえないじゃない。でも僕が読んだ本では、朝窓を開けていっぱいに息を吸い込んで、そこで感じたことを喋るっていうトレーニングをするそうです。今日の空気は言葉にすると…って。
―味を述べるみたいな… ソムリエってそれに近いこと言ってない?よく理解できないような表現笑。
―そう、ですね笑。ぎりぎり分かるか分からないかくらいの、それって匂いの表現なんですね?みたいな笑。 そうそう、ね笑。そういうのをやっていくと、まず自分が匂い対して敏感になって、「あれ昨日と違う、今日の朝の空気」とか、人間の感性っていうか匂いをかぎ分ける機能が高まっていく。毎日生きるか死ぬか、緊張感があった時には人間ってもっと嗅覚が良かったはずなんだよね。危険が迫ったかとか、食べ物に毒が入っているかとか。でも今はもう、関係ないでしょう。だから、嗅覚に関する「感性」が落ちていると思う。でも、DNA的にはその機能は持っているわけで、それを呼び起こすことをやってくと、ものすごく敏感になる、ワインでも食べ物でも何でもいいけど
―こう自分のバロメーターが広くなるっていうか、精度高くなるっていう感じですかね。 そう。そこで何を言いたいかっていうと、これは学びもそうなんだよね。そういう意思で学んでいるのと、ただ苦痛の暗記と思って勉強しているのでは、成果が全く違う。今日学んだことから、何をつかみ取ってやろうかと思って90分間聞いていたら全然世界が違うんだよ。そういう人になってもらおうと思って、仕掛けをいっぱいしている。

人間が作った単なる記号

 僕自身は、最も意味のある90分にするためにはどうしたらいいかっていうのはいつも考えている。学生の頭が動いているかどうか。それに、授業中に暗記は出来ない。しなくていい。むしろ、概念・コンセプトみたいなものをわかってもらった方がいいと思う。化学の勉強はしましたか?
―はい、しました。 ね、化学式が沢山出てくるでしょ。あれってかなり現実と違うのですよ。だって、人間の細胞をいくら顕微鏡で見たって化学式なんて見えてこない。あれは、♪音符みたいなもの。そうやって説明するんですよ。
―…確かに、そう言われると分かりやすいですね!その発想があるかないかでかなり理解が変わりますね。 だから化学記号ダメーっていう人よくいますよね?例えば、これ、これ(化学式・組成式)を見ると「うわ!わかんない」とかって言う人は多いですね。

 でも自然界は「化学式」で動いているわけではない。生物や僕らは分子を別の感覚で認識して、例えばバラの香りとかが、いい匂いだと感じている。実際の分子のモワーッとしたのは、全部電子ですよ。触ってるのは全部電子。そう思うと、化学式は、なんだ、人間が作った単なる記号じゃない、っていう風になる。
―それは、知識の奥行きが出るというか、見え方が変わりますね。 世界が変わるでしょ。だからフェロモンで昆虫が寄ってくるとかいっても、結局このモワーッとした形を感じて、あ、自分達の仲間がいるとか認識している。ね、言われてみればそうなんだと。音楽聞くとき、音符を思い浮かべる必要はないですよね。
―振動ですもんね。 そう振動、あと自分の経験値がそこに合わさって、感動したり涙が出てきたりとか、ね。人それぞれで感じるものが違うでしょ。だから、アートなんですよ!
―アートですか笑。急に…笑。 そう芸術です。音楽だって法則・規則があるでしょ。絵だってデッサン技法とか構図とか、絶対的な決まりはあるんですよ。そこをやだ!この構図やだあ!なんていうのじゃなくて、それは表現型、共通の理解の方法として必要なわけですよ。でもそこの上に載せるものは、全てはアート。ね、化学と同じです。すんごく楽しいですよ。

農工大生はアーティスト🎨

 アーティストですよ、農工大生は。
―?農工大生はアーティスト、ですか?名言がいっぱい出てきますね笑。 白いキャンバスに何を書こうかって、これは自分の人生設計でもいいし、研究でもいいし、あるいは学び方でもいいです。自分なりのやり方。例えば、勉強のノートも自分なりのノートを作るとか、これもアートですよ。
―ど、どういうことですか。笑 だから、ノートってただ先生が言ったことのコピペじゃないんですよ、iPhoneでただパチパチ撮るのと違って、そこに自分が「え、ホントにそうなの」とか、「あ、そういうことかもしれない」とか。そういうことをどんどん書き込んでいくべきものではないでしょうか。
―なるほど、メモを取ったり、コメントを書いていったりとか

 そうそう、自分の世界、自分にしかない世界。そうすると、私自身は、ペンとか文房具ノートとかすごいこだわりがある。別に、それじゃないといけないとかはないですけれど、僕は好きです。勉強するっていうのがアートなら、キャンバスは選ぶでしょ、そういうことで、ノートについても選ぶのですよ。
―面白いですね笑。 楽しくならない?学ぶってことが。クリエーションのツールだから。だから、僕自身はスライド作ったりするのは物凄く好きで、ものすごい時間かけているんですよ。


千葉先生の「授業百景」vol.2はここまで!
続いて、スライドづくりや研究とイノベーションの関係について詳しく教えていただいたvol.3はこちら

※ 千葉一裕先生は2020年度より、東京農工大学の学長職に就任されたため、担当されていた授業は他の先生が受け持つことになります。