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先生ヒストリー

# 第十七景 超絶怒涛な日々の中で必要だった時間。#番外編

2020.07.08

田中剛先生からお聞きした経緯の中でも、さらに濃ゆい若手時代のお話をピックアップしました。田中剛先生の先生ヒストリー本編はこちら

田中剛(たなか・つよし)先生
生命工学科

…怒涛の日々

―授業は助手の頃から受け持ってましたか? たまに、先生の代わりで手伝うっていうのがあった程度で。講師になったのはたぶん33とか、それまでは授業って形では何もしてなかったですかね。
―33歳の頃に授業をやるようになってから、現在までで変化はありましたか? 変化しかないからね、毎日生きるのが必死だったので。ふっふっふ笑。
 何かっていうと、僕の場合助手から講師になったし、その後も別に農工大でポジションが約束されているわけではないので、どこかで准教授になるためにプロモーションしていかなくちゃいけない。だから、業績を稼がなくちゃいけないんですよね。外部資金とか、もちろん科研費を取ってきてとか、何とかの予算とってきてとか。そしてその合間合間で授業も準備しなくちゃいけなくて…っていうのは、一番地獄の日々でしたね。
―…そうなんですね(*_*) それで、プライベートの話をすると、ドクター取ってすぐに結婚して、直後2年間はなぜかイギリスに行っていて、戻ってきてしばらくして何年後かに子供が生まれた。授業やり始めた頃っていうのは、妻も働いていて、もちろん産休は取っていたけれど、送り迎えは朝と夕方は自分がしていて、っていう生活の中で、さらに研究成果も出さなくちゃいけなくて、研究室の業務もあって、その合間を縫って授業準備もして、プレゼンもして。だから、十分な授業準備時間が取れてたかっていうと、今取れてる時間の何分の一かっていうくらいに取れてなかったですね。
 やっぱりあの30代前半、これはもう日本の構造的な問題なのか分からないけど、今の若手の人で苦労されている人たちの気持ちが分かるんですよね。プライベートも一番大変な時期で、子供二人いて、二人目が小学校あがるまでは、もう地獄の日々。今12歳なので、5、6年ぐらい前までは結構バタバタだったんですね。一人目がもうすぐ高校生になるので、もう大丈夫なんですけど。っていうのが、実際かな。
ー(゜゜)! だから、17時ぐらいで一旦子供を迎えに行って、また大学に戻ってきてから、論文書くか授業準備するか、って感じの毎日だった。
―超…大変じゃないですか。 その当時は、今に比べたら相当大変だった。まあ、今はもちろん落ち着いたかな笑。子供が大きくなって、そんな手もかからなくなったし。ふふふ笑、ごめんね、わけわかんない話して笑。
―いえいえ!そういうお話もちゃんと聴いておきたいです笑。 はっはっは笑。

伊集院静さん、やっぱりいいこと言う。

―若手の先生へのアドバイスなど、あったりしますか?多忙を極めていて、どんな風に時間を割り振ればいいか、わからない!みたいなお悩みに…。 あんまり、考えなくていいような気もするけどね。いや、考えないと…なんていうかな笑。確かに、がむしゃらっていうと、なんとなく汗だくで走っているイメージで、実際そうだったけれども、それだけじゃないんだよね…。
 言っていることが真逆のようだけど、要はそれでよかった部分もあるな、と思っていて…。24時前に帰ったことが無いような生活をしていたけど、逆に自信もできて、それがあったからこなせるスキルも身についた。そんなことは、今はもちろん年齢や体力的にも、モチベーション的にも出来ない部分もあるかもしれない。…もっとうまく説明できればいいんだけど。

 作家の伊集院静って知ってる笑?
―はい! 彼が、ちょっとした自伝みたいな本に、同じような30代前半の頃がとてつもなく忙しかったっていうことを書いていて、その中の言葉がすごく響いてるんだけど。ごめんしょうもない話ずっとしちゃってる笑
―いえいえ!聴きたいです。 なんか、僕も全く同じ感想を持った言葉があって、それが「無所属の時間をすごく探した」と。確かに、30代の時は家庭だと妻の旦那でありながらもパパでいなくちゃいけなくて、大学に行くと先生を演じなくちゃいけなくて、一個人の田中剛の時間が無い。僕、行きかえりの車の中が一番安心できる時間だったんです。大学の先生でもないし夫でもパパでもなくて、一個人の時間。
 同じようなことを伊集院静が書いていて、ああ気持ちが分かる!旅に出た時に、伊集院静じゃない一個人の男として生きたい、という欲求があったって話に、すげーわかるわー!って。
 30代前半はがむしゃらな毎日で、原稿締め切りが死ぬほど来て、全く帰宅もできなかった。けれども、それが今の自分を形作っているから、若い人たちのね、もう忙しくてどうしようっていう、今みたいな質問を受けると、「何も考えずにやれ!」と。それで約束できるのは、絶対にそれは役立つんだ、と。
 論理的な回答は出来ないけれども、間違いなくそれは、自分の今の自信につながってます。いろんな仕事が押し寄せて、締め切りに追われたりもするけど、多忙な時期を経験したからこそ、今、より多様な仕事をこなせる、みたいなことを読んだときに、僕もそれを重ね合わせて「ああ、分かる気がするな」みたいな。分かる?笑。
―まだ…分からないかもしれないです笑。 それは後付けかもしれないけれど、その時のね、「無所属の時間」っていう言葉がすごい好き。さすが作家、いい言葉。あの時自分が何を求めていたのかっていうと、無所属の時間だったんですよね。先生でもないし、家族にも属していない時間。すごい贅沢なこと言っているんだけど。
 誰も知らないところに行って、なんか好き放題に暴れたいっていう笑、そんな時期がその30代の前半から後半にかけてあったかもって思う。全然参考にならないかもしれない、その先生には笑。
―いやいや! しゃべりすぎた…
―いえいえ笑!


田中剛先生の「先生ヒストリー」番外編はここまで!
…私もいつか「無所属の時間」を探す日が来そうです。

「授業百景」第十七景はいかがでしたでしょうか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに!