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先生ヒストリー

# 第一景 初めて教壇に立ったのは、教育学部の授業

2020.03.10
高橋美貴

高橋先生の、今に至るまでの経緯を聴かせていただきました! 
高橋先生の「授業百景」はこちら

内心は帰りたくて仕方がなかった…教育学部で新米先生時代

高橋美貴(たかはし・よしたか)先生
地域生態システム学科

―農工大の先生となるまでの経緯を教えていただけますか。  初めて教壇に立ったのは新潟大学の教育学部の授業でした。授業を受ける学生たちは、先生になりたくて勉強をしている教師の卵たちだったので、授業後に技術的な面から授業のやり方について多くの指摘やクレームを受けました。もともと、人前で話すことが大の苦手だったので、授業前は憂鬱で、教室に行きたくなくて仕方がなかったです。精神的には、なかなか大変でした。

 農工大に来たのは、15年前くらいですね。学生からは、とても厳しい指摘も受けました。例えば、ある学生さんからは、「この授業はなんの役に立つのですか」と、怒ったように言われたこともあります。
 私自身の専門研究は文献史学といって、古文書など地域に残された過去の文献資料などを読み解きながら、過去を実証的に再構成していく、というものです。日本社会は、すでに江戸時代から百姓も含めた一般の人びとの読み書き能力が高かったために、地域にたくさんの記録や行政文書が作られました。それらが、かつて村役人などを勤めたような古いお宅にはいまだに残されているのですね。その量は膨大で、世界的に見ても日本社会を特徴づける要素のひとつなんです。

 今という時代は過去の積み重ねの延長線上に出来上がっているわけですので、地域にしろ、国家にしろ、はたまた私たちの文化や価値観にせよ、それらがどのような過去の歴史的積み重ねのうえに作り上げられてきたのかを問うことは、私たちは何者なのか・これからどのような未来を目指すのかなどといった問題を考えるうえでも学問的な課題になると思うのですが、実学的な有効性を重視し求める農工大生の視点から見ると、意味がないと思われたのでしょう。素朴かつ素直な質問にたじろいでしまい、うまく答えられずに、自身の口下手さや認識の曖昧さに自己嫌悪に陥ったものです。
ー(゜゜)!そうだったんですか。 農工大での授業ですが、最初の3年くらいは踏ん張って自分自身の実証研究などに即した授業もやっていましたが、どうもうまく学生さんの興味を引くことができない。そこで、思い切って、自身の研究と授業とを、ある程度切り離して考えることにしました。授業に盛り込む論点を、自身の研究という狭い領域に止めずに、他の研究者の書いた書籍や論文を広く読んで論点をかき集めながら、授業を組み立てることにしたのです。いわば、作曲よりも、編曲に重きを置くというスタイルで授業づくりをしていくことにしたわけです。

 私なりにではありますが、沢山の文献を読み漁って、農工大生の感性にfitしそうなものを取り出して授業のネタを集めました。頼れる教科書などありませんので、このような授業づくりの方向転換をした最初の数年間の授業はボロボロでしたね。農や環境、グローバルなどのキーワードを意識しつつ、ときに自分の専門性とも絡めながら、授業をバージョンアップしていくのは大変でしたが、自身の勉強にはなりました。結局、授業への苦手意識が消えることはなかったですけれども。

高橋先生の居室。本がきちんと本棚に収まっている。

学生から先生へ、届く声、届かない声

―授業の内容が、理工系の学生にはやや縁遠い領域だったんですね。  もちろん興味を持ってくれる学生もいました。授業終了後に学生さんにコメントカードを書いてもらうのですが、そのカードに時間をかけて一生懸命書いてくれる学生さんがいて驚きました。私の授業、とくに教養授業を受けてくれる学生さんは、とても熱心に反応してくれる学生さんと、全く無関心な学生さんとにはっきり分かれます。興味を示してくれない学生さんにどうしたら授業を聞いてもらえるのか、今でもかなり悩んでいます。
 授業アンケートでは、「そもそも興味がない」などといったコメントや、ときには「一部の学生をえこひいきしている」など身に覚えのないコメントが書かれることもあり、ときどきドッと疲労感・徒労感に襲われることもあります。
―結構辛辣ですね…。  ですから、いい授業をしているという自信は正直ないです。今回の報告対象に選ばれたのも驚きです。もちろん、授業の内容以外に、わずかなりとも話術のスキルを磨けたら、とも常に感じています。ヒントを得られるのでは、と思い、舞台もしばしば見るようになりましたし、落語や講談などもよく聴いています。
―答えにたどり着けない場合には、温度差が生まれるかもしれないですね…。
ただ、学生からは、授業の最後に次の授業を予測してコメントを書き、次の授業冒頭で答え合わせをするという部分が高く評価されていました!
 ありがたいコメントです。学生の皆さんには、そのような言葉が教員をどれほど勇気づけるか、ぜひ知ってほしいです。


 高橋先生の授業は、史実・資料から当時の様子を推測する過程が論理的であること、かつストーリー性の高さが学生から高く評価されていました。また、講義後に問いを出し、その答えを学生が考えてコメントカードに記入し、次回授業で答え合わせを行うシステムが能動的な学びに繋がっているようです。
 とても謙虚な高橋先生が、丹精込めて作った授業を履修している学生が羨ましいです。履修したかった…。

「授業百景」第一景はいかがでしたでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに!