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先生ヒストリー

# 第十二景 インプットだけじゃなく、アウトプットもできるように

2020.05.14

内藤方夫先生の、今に至るまでの経緯を詳しく教えていただきました!
内藤先生の授業百景はこちらから。


内藤方夫(ないとう・みちお)先生
工学部物理システム工学科をご退職され、現在シニアプロフェッサーとして授業を受け持っている。

研究所から大学へ

―続いてですね、現在に至るまでの経緯を伺っていきたいと思います。農工大にはどのような経緯でいらっしゃいましたか? 僕は大学出てから、かなりいろんなところを転々としてきたんです。まず、東大で助手を計7年ぐらいやったのかな。その後アメリカのスタンフォードに2年半行きました。その後、日本に帰ってきたのが33歳。そこからNTTの研究所に入って、50歳になる年に農工大に来ました。今は退職して1年目で65歳だから、農工大に来て15年ちょっとです。
 東大助手の時以外は授業ってほとんどやってなくて、それも学生実験の面倒を見たりする程度でした。本格的な授業をやり始めたのはここに来てからです。

 スタンフォード大では客員研究員をしていたんですけど、あの頃はアメリカ強かったな。今でも強いんだけども、年配の先生方の研究力とかね、バイタリティとか、ちょっと日本の50代60代の先生じゃかなわないな、と思いました。
 で、NTTに対応するアメリカの研究所でベル(Bell)研というのがあって、今はもうないんだけども、そこのスタッフの研究力は一つ抜けてましたね。日本に対してだけじゃなくてヨーロッパと比べても、びっくり。
 それで、たまたまアメリカにいた頃に、NTTから派遣された人と同じ部屋にいたので、その人が引っ張ってくれたというか。
―なるほど。それで、日本に帰ってきてNTTに入ったんですね。 NTTには、16年ぐらいいましたね。初めから、自分のテーマでやって良いっていわれて。でも、一人でやってたんで、あの時の労力っていうのもかなりのもんだったな、今だったらとてもできない。一人ででっかい装置を動かしてたから。―その後、農工大へ赴任されたんですね。 それはね、色んな意味合いがあって。日本の民間企業の研究所って多くのところが定年50歳とか55歳なんですよ。で、その後は研究じゃないポストで、定年までいると。で、僕は教育もやってみたいっていう気持ちもあったので、50歳になる直前に研究所を退職して、農工大に来ました。
―教育もやってみたいという気持ちはもともとあったんですか? それはね、自分の研究がどれだけ世の中に役に立ってるのかって、大きな目で見ると大したことやってないんじゃないかな笑、って思うように、年取るとなってくるんですよ。
 だったら、やっぱり世の中の役に立つことをやったほうが、っていう気持ちが半分くらいありました。残り半分は研究を続けたい気持ちです。研究が半分、もう半分教育で貢献しようかと思って。

研究者になる進路選択は時代の波によって

 僕は大学院生の頃から、研究をやりたいなーということで、教育よりは研究がメインなルートを行ってきた。農工大の私の研究室の卒業生でも、数名は研究者になってる人がいます。ドクター行って、今年の3月に卒業した女子学生がいて、今イギリスでポスドクやってますね。
―かっこいいですね! だから、何人かは先生の僕と似たような、ルートに進みたいと思う学生がいるんだけども、男子学生に少ない笑。男子学生はM2になって、就活のシーズンになるとそこでもうドクターに行くの諦めちゃう。
―そうなんですね(゜゜)!…なんだか、境遇からすると逆な気がしますけど…。 いや、今逆ですよ。今女性の方がそういうアカデミックなポストを得やすい。そういう時代があと何年続くか分からないけど、今は女性の方が、いい時代ですよ。
―それは、今ちょっと男性陣は辛いかもしれないですね。もちろん、能力がありきの話で、数字として半分半分にしたいみたいな風向きはありますよね。いいかどうかかは分からないですけど。

―私も研究者になりたいなって思った時期があったんですけど、時代的にリスキーかなと思って諦めました笑。 リスキーはリスキー笑。そのリスクを考えたら研究者のルートは行かない方がいい笑。もう若いときは、そんな事考えないですからね。
―そうなんですね。もっと研究者を重んじてくれるというか、サポートしてくれたりとかするような時代では今ないのかな、と思って、 いや、分野によりけりじゃない。例えばIPSなんかの、遺伝子組み換えみたいな分野は、お金が相当出てると思いますよ。
―たしかに笑。そうですね。それも、いつまで続くか分からないっていう。 そう。波があるので、波の上にあるときは、どうにかやっていけるんだけど、下になった時に耐えられるかどうか、どうだろうな…。

じっくりアクティブラーニング

―内藤先生から学生に伝えたいことなどありますか? 最近、スマホとかで、スマホでもパソコンでもいいんですけども、検索すれば答えが返ってきて、レポートもそれをもとに書いちゃうとかね。それは、これから弊害になっていきますよ。じっくり、なにか本を読むってことをしないでしょ、最近?
 さっき言った、ちょっと難しめの本を、時間かけて読む、急がば回れで読むっていう精神状態になかなかなりにくい。まあ、それだけいろんなことをやらなきゃいけないってこともあるんですけど。
―そうですね。もちろん裕福な家庭に生まれてっていう子もいれば、学費を自分で稼いでっていう学生もいてバックグラウンドも色々ありますね。…私も、みすず書房の『持続可能な発展の経済学』っていうごりごりした本を一時期ノートに取りながら、じっくり読んでたんですけど、卒論が始まってから放置してしていましました笑。じっくり読むっていう精神状態は確かに、今の学生が持ちづらいというのはありそうです。 まあ、本を読むだけじゃなく、なんでもいいけど、じっくり勉強するっていう時間があるといい。分からないことを、自分で考えて解決するんじゃなくて、ネットで検索して解決するって、それが全く悪いってわけだとは思わないし、時にはそういうやり方の方が正しいのかもしれないけども。
―そうですね。例えば、災害が起きて電気が全部使えなくなった時に、頭に知恵がないと何もできなくなるっていうのは怖いなあ、とか思ったりしますね。 確かに。
―学生にはじっくり学ぶ時間を、って感じですかね。 あと、今言ったことは「外から入る頭の動き」であって、大学入った後や社会に出てからは、「外へ出る方向の頭の動き」が重要だっていうのが、どっかで切り替わらないといけない。 吸収するだけのパッシブな頭の動かし方、例えば会社に入って物理の教科書読んでたって、それではお金もらえないんですよ。
―なるほど。確かに笑。 あと、アクティブラーニング*って、もう紋切り型のアクティブラーニングの例が幾つかあって笑。
 グループミーティング、グループディスカッションみたいな、そういうことを思い起こすと、これはできる子は伸びますけど、静かなおしゃべりしない子は沈んじゃって、合わないんですよ。でもアクティブラーニングっていうと、そういう例をいくつか挙げてこうやりなさいって言ってる。
―本質的じゃないですよね。なんというか、映えるような、椅子から立ち上がらなくても、コメントカードのやりとりでも能動的になり得ますよね。あの、他の先生から伺ってきた「自分との対話もアクティブラーニングだ」**って言葉が、まさに「じっくり考える」ってことなのかなって今思いました。自分の中で自問自答する、というアクティブなラーニングもあるのかなって。 ああ、それはそうかもしれないですね。
―そういう意味で、内藤先生の「じっくり」って聞くと、確かに自分との対話になりますよね。ほんとに大事だと思います。

内藤先生の学生時代は

―ちなみに、内藤先生は学生時代に授業が物足りないな、と感じたことはありましたか? あった。大学3年、4年、M1、M2の前半くらいまでの4年間、生涯で一番本を読みました。その時は、授業よりかなり先に進んだ内容の本を読んでました。
―本を読んでごりごり進めるタイプなんですね。 うん。で、一時期、理論物理やろうかなって思ったこともある笑。それはね、大学院生の頃って上級生と下級生がペアで実験するんですよ。で、下級生の僕が上級生にこうしなさいい、ああしなさいって言われてやってる間は、実験好きになれませんでした笑。
 その後、自分で、1人で企画して実験やるようになって、「あ、これは面白い」と思って。みんなそうだと思うんですよね。上級生からあれやれこれやれって、言われてる間は、実験楽しいと思う人はあんまり多くない。でも、自分で新しい企画をする、こういう風に実験を変えたらどうなんだろうっていうのは楽しい。実験の企画も出来るようになるまでって結構かかるんですよ。
―どれくらいですかね? 同じ装置、装置をまず組み上げるのに、いくらかかるのかも分からないでしょ。で、どうすれば効率よく装置が組みあがるのか。アイデアを出して、それをかなえるような装置を組み上げる。で、実際に結果が出てきたときは、それで一段落ですよ。結果が出てこなかったら、もうすごくもがくんですけど笑。
―ひゃー…やっぱり実験するってすごくクリエイティブですよね。 まあ、いろんなタイプがいて、過去にある実験をすこーしマイナーに修正して新しいことだっていう先生、というか研究者もいっぱいいるし、それでは満足しない研究者も少ないけどもいます笑。
―先生はどちらかというと…後者なんですか? 後者です。
 僕主流にいたこと一度もない。研究の世界の中で。みんなと同じ流れに乗るのが、もともとの性格なんだろう?あんまり好きじゃない。
―そうなんですね笑。一人でやってる方がいいって感じなんですかね。 うん。

インタビュー終了後に実験装置を見せていただきました!


 高度な内容を扱い、2年3年とじっくり時間をかけながら思考力が培われるように、という内藤先生の授業。苦労して理解した経験は確実な力になるはず…学生はめげずにくらいついて行きたいところです!

「授業百景」第十二景はいかがでしたでしょうか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに!

* アクティブラーニング…学修者が能動的に学習に取りくむ学習法の総称。
座学中心の一方的教授方法では身につくことの少なかった21世紀型スキルをはじめとする汎用的能力、ひいては新しい学力観に基づくような「自らが学ぶ力」が養われることが期待されている。アクティブラーニング型授業と呼ばれるのは、発見学習、問題解決型学習、体験学習、調査学習、グループディスカッション、グループワーク、ディベートを取り入れた授業とされる。

** 嘉治俊彦先生の「授業百景」vol.2より。