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先生ヒストリー

# 第十景 迷った時にふっとよぎる自分10年計画 vol.2

2020.05.14

嘉治寿彦先生の「先生ヒストリー」vol.2です!
これまでの記事はこちら 「先生ヒストリー」vol.1「授業百景」vol.1


嘉治寿彦(かじ・としひこ)先生
化学物理工学科

自分10年計画

 でも、時々学生さんと話す時に人生相談みたいなことされると、僕は「10年後、自分どうしてたらいいと思う?」って、聞くようにしてるんです。 

 これも一応エピソードがあってですね。僕、大学に入った頃って、すごい、人生悩んでいたんですよ。さっきの話と矛盾するかもしれないですけど、さっきの話だと研究者になるって話になってましたよね。でも、なんの研究者になるか決めてなかったんです。なんていうか、仕事で海外行きたいだけで笑。
―いや、その気持ちすごい分かります笑! そうです、そうなんですよ。なので、じゃあ何の研究しようって思った時に、そもそもみんなどうやって研究内容決めてるんだろうって思ったんですね。

 僕がいた当時の東大の教養学部は、選択科目をいくらでも取れたので、本当に理系文系構わずいろんな分野の授業を、色んな先生の授業を受けまくったんですよ。で、その時に、ごく一部ですけど、授業終わった後とかに先生と個人的に話を出来るようなタイミングがあるような授業があって、そういう授業で「あの、どうやって研究テーマとか決めてるんですか?」とか、「どうしてこういう色々面白い内容をやろうと思ったんですか?」とか、聞いてみたんですね。

 それで、1人、すごい人生の指針となるようなことを言ってくれた人がいて、それが今の話なんです。「10年後、自分がどうしてたいと思うか?っていうのを何でもいいから考えてみるといい。そうすれば、自然と今やんなきゃいけないことが分かるんだ」って言われたんです。つまり、そこから逆算すれば、今しなきゃいけないことっていうのは決まりますよね。それが研究の内容であってもいいし、人生の内容であってもいいですけど。それを言われて、そっか!って思ったんです。

 だから、別にこれは何でもいいんですよ。外国にいたいでもいいし、今と同じ場所で楽しくしてたいでもいいし、それぞれです。子供が欲しい、でも。ただ、思うだけでは、必ずそうできるかっていうとならないので、それを逆算して考えて行動しないといけないんですね。
 あと、10年は意外とちょうどよくて、2、3年だと、もう今の延長ですぐ分かるんですよね笑。幾つか、もう嫌なこととかも思い浮かぶんですよね。あれが嫌であれは好きだから、ぐらいの話になるんですけど、10年後っていうとすぐに思い浮かばない。でも、20年、30年先と比べると現実的に考えられるんですよ。
 だから、10年後を思い浮かべて、逆算するっていうのはその先生の話聞いてから心がけてるんです。

 この「10年後どうなっていたいか?」っていうのは本当に皆さんにも考えてほしいなと思っていて、研究室に配属された学生さんが個人的に相談されたりしたときとか、授業でそういう話をするタイミングがあった時には、言うようにしてます。

摩訶不思議アカデミック

 ちなみに、それを言ってくれた先生っていうのは河口洋一郎*先生という人で、化学とも物理とも全然分野違います。コンピューターグラフィックスで芸術と数学を結び付けるという研究の先生で、「え、そんな摩訶不思議なこと、どうやって思いつくの??」って感じで笑。
―芸術と数学ですか…沼が深そうな感じがします笑。 すーごい、個性的な先生ですね。だから、なるべく研究者になったあとも、日本でも海外でも、誰かその分野のパイオニアの先生とかと会った時にちょっと個人的に話す時間が出てきた時には、「ところであの、昔の研究って、どうやってやったんですか?どうやって思いついたんですか?」って聞くようにしてます。「ああ、そっか、やっぱりちゃんと皆さん考えてやってるんだな」って笑。
―嘉治先生も相当考えてらっしゃると思うんですけど笑。それは、定点観測って感じでいいですね! ええ。すごくいろんなことが学べますね。結構皆さん教えてくれますよ。「これ、本当は公表してないんだよね、オフレコね。」とか言いながら、教えてくれる人もいます。
 あと結構、聞いてみるとすごい謙虚だったりするんです。僕から見たらすごい手広くやってるように思うんですけど、その先生から言うと「いや、僕は得意なことがこれしかないから、これが生かせることをただひたすらやってるんだ」って、え本当?って思いながら笑。そういう風に言う人とか、色々です。

迷った時にふとよぎる

 その、10年後っていうのを教えてくれた河口洋一郎先生も言っていたと思うし、僕も実体験として思うのが、難しく考える必要はなくて、本当に研究に限ったことじゃなくて、色んな事において言えるんですね。

 でも、そう思ってるだけでは、実際計画通りにすべてうまく行くはずないんですよ。かなり偶然巡り合わせの連続で、僕はギリギリの連続だったんですけど笑。でも、迷った最後のギリギリの選択の時に、フッと頭をよぎって、間違いにくいんです笑。「え、どっちだっけどっちだっけ!?あ、でもあの時、こう思ったな、こっち!」みたいな笑。
 そういう瞬間が、何度も何度も何度もあるんです笑。でも本当、実際は行き当たりばったりです。それでも、後から見ると、ああ、なんか思ってた通りだなっていう。

 だから、これを言うと、「そんな計画通りになんて出来ないっすよ」って言われるんですけど、僕だって今農工大にいるって思ってなかったですし笑、その前だって有機薄膜太陽電池の助教の公募が出るなんて思ってなかったですし、分子研に行くとも思ってなかったから。同級生で卒業と同時に分子研に誘ってもらって先に助教になった人がいたんですよ。でも、その時は、良かったね!分子研てどこにあるの?岡崎、ああ徳川家康が生まれたとこね、ぐらいで、行く用事あるかなぁ、もしかしたら一生行くことないかもなーぐらいにしか思ってなかったです。
 でも、その何年か後に、そこで働いてますしね笑。そんなんで分かんないんです、わかんないけど、いずれ、計画に合流してくるんです。
―定かではないですけど、予測を立てとくっていうのは大事ですね。 ええ。それこそ、10年後に子供欲しいなとか思ったら、まあその前に結婚しなきゃなとか笑。
―なりますね笑。逆算すると10か月あるしなあ、とかなりますよね。でも、やっぱり今世代で思ってるのは、子供養うにはお金必要だなあとか、給料は少ないし、とてもじゃないけど多忙すぎるなって、少子化になっちゃったような気がします笑。 そう、それは研究者も難しいですよ。なかなか生活が、将来がはっきりしない。
―(*_*)やー、難しいです…。

ちょこっと人生相談

 コーノさんは、研究者になります?
―正直…なりたいんです。でも少なくとも今、日本で目指すのは結構リスキーかな、と思ってます。あの、エジソンがジャガイモ小屋で研究してたってお話を聴いて、自分がやりたいことがあれば、別にアマチュアでもいいからやってもいいかなと思っています。お給料をもらうって、たぶんどこかで社会の役に立たないといけないんですけど、自分の好きなことやるっていう範囲だったらまあ、個人で勝手にやるしかないかな、と。 それは…分野によりますね。
―そうですね、お金が要りますね(*_*)。 さすがに、太陽電池の研究は、個人では無理でした笑。
―困難ですね笑。 文系だとかなり、実際そうやられてる方は多いですよね。農学部の方の研究だと、どうなんでしょうね。博物学的なものだといけるのかな。
―私は、森林・林業が中心だったんですけど、その中でも結構社会学っぽい要素があるかと思います。林業の技術的なところで、俗説や言語化されてない熟練知みたいなのが科学的に本当かどうかっていうのは、調べてみたいなというか、そんな感じです笑。 なるほど、フィールドワークができる余裕のある仕事…。
―…そうなんです笑!まさに。 文系の人たちはそれを考えるから、地方自治体の役所勤めの人が凄い多いんですよ。―考えます!笑。やっぱり定時で帰れたほうが、余白の時間があるかな、と笑。 僕の友達とかでも、地方自治体の図書館の司書さんとかいるんですよ。―そうなんですね!司書さん…でも最近また給与が…。 そうなんですよね、なかなか最近風あたりが厳しくて、難しいですね。
―誰にでもできる仕事ではないのに、というか。 難しいですね。だから、実際に司書さんになった友人の様子を見てると、そんなに暇そうではないなって、忙しくて余白もなさそうだなって。
―司書さんのお仕事かなり高度だと思います。本当にそうだと思います。そうですね、お時間も迫っていますし**、ひとまずはお聞きできたような気がします! はい。すみません、かなり脱線しまくったような気がします。
―いえいえ、全然です!すごく、今までになかった発想が増えました笑。ありがとうございました! ありがとうございました。


 物理の基礎である力学や最先端の量子力学など、知っているつもりのことから全く見当がつかないことまで、それぞれに応じた動画やディスカッションを通じて理解を促す授業が特徴的な嘉治先生。今話題のアクティブラーニングから、人生設計の指針まで、多彩なお話をしてくださりました。

第十景の「授業百景」いかがでしたでしょうか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。次回もお楽しみに!

* 河口 洋一郎先生…CGアーティスト、東大名誉教授。
** 10時から12時過ぎまでお時間をいただいて、嘉治先生は12時半からの会議へ向かって行かれました。大学の先生は研究に授業に、会議にその他もろもろ超多忙です(*_*)