• 授業百景
  • 先生大図鑑
  • 高校生からの質問におこたえします
  • こんな授業あります
先生大図鑑

#29「水谷哲也先生」〜ウイルス学から未来を明るく!「ウイルス」のマイナスイメージにとらわれない研究の数々に迫る。

2021.03.23

第29回は、感染症未来疫学研究センター(元国際家畜感染症防疫研究教育センター)の水谷哲也先生に話を伺うことができました!

水谷先生の、今に至るまでの経緯や研究の魅力について語っていただきます!

授業については、こちらから。


〈プロフィール〉

お名前:水谷 哲也(みずたに てつや)先生

所属:感染症未来疫学研究センター(元 国際家畜感染症防疫研究教育センター) 教授

(主に、獣医学科の学生が進学)

獣医になったきっかけの本: 「ムツゴロウの獣医修行」 畑正憲

タフさの原点である大学生時代

…続いて、大学生時代にどのような学生生活を送ってらっしゃったのかお聞きしてもいいですか?

 まず、研究はめちゃくちゃやりましたね。だけどそれ以外のこともたくさんやっていて、夕方からカラオケをして、その後に研究室に泊まったり、一気飲みでつぶれていたことも、徹夜で麻雀もやったり、大学が札幌にあったので、授業の後にスキーに行ったりっていう楽しみもありましたね。

他にも山に囲まれたところにすごく綺麗な湖があって、そこで友人たちと素っ裸になって一日中過ごすとか。その時のビデオは自分の結婚式でも流しましたね笑

…かなりタフな学生生活を送ってらしたんですね…!笑

そうですね、やっぱり体力はある程度必要です。どこの分野でも、ある程度体力勝負というところはありますよね。

特に、僕らの時は大学に泊まって研究することが流行っていたので、教授に事前許可をもらって、教授室のソファで寝させてもらったりとかしてましたね。これも評価者の意識の話なんですけど(授業百景を参照)、教授からも「こいつはこれから徹夜で研究するんだな」ってなるじゃないですか。

例えば、朝、研究室に来た先生に新聞紙かぶって寝ているところを起こされたら、それこそ1番の良い評価ですよね笑

…先生の研究は、同じジャンルを研究している先生方と比べてもとりわけ視点が多様だと思うんですが、それも大学時代に養われたものなんですか?

そうですね、確かに今よりも昔は大学の研究の自由度が高かったので、それに憧れてましたね。今思うと、この先生はちゃんと考えてたのだろうかと思う研究もたくさんあって。例えば、うさぎの耳にタールを塗り続けて、世界で初めて人工的にガンを作ったというのがあるんですよ。だけどさ、大学の教授が、何百日もひたすらうさぎの耳にタールを塗り続けてたんだと思うと、自由でいいなって。この発想というか大胆さに憧れちゃいましたね

ここでは、言えないような研究もたくさんあるんですけど、本当にあの当時の北大の先生方は、いい意味でリミッターが外れていて、今の僕も見習わなきゃなと思いますね。

歴史的瞬間を、リアルタイムで研究する。

…次に、先生の研究されていることについて、お伺いしてもいいですか?

はい、時代に即したものについて話すと、今コロナウイルスでみんな変異変異って言ってるけど、本当のウイルスがガラッと変わるっていうのは点変異というよりもゲノム同士の組換えと言われてるんですよね。

そこで僕らが今追っかけているのは、日本の豚の農場でコロナウイルス科のウイルスとピコロナウイルス科という別のウイルスが、おそらく豚の体内で組換えを起こして、新たな機能を獲得したということを研究していますね。

その農場では、組換わったウイルスとそうじゃないウイルスが存在しているんです。ということは今組換え の真最中でして、つまりウイルスの進化の歴史の中の1ページ目をみているということになるんです。

これってかなり珍しいことで、ウイルスが「科」を超えて組換えを起こすというのは、ほとんどないことなんですよ。今出来上がっているウイルスは、何千何万年という過程で、こういう組換えが起こることで新しいウイルスができて、定着してきたはずなんですよね。

それがどうして組換えが起こったのか、組換わるとどうなるのか、組換わるアドバンテージとは何か、組換えにより捨てた遺伝子は本当に必要なかったのか、などについて調べています。これがメインの研究で、学部生、修士学生、博士課程の学生、スタッフ達と一緒に取り組んでいます。

ウイルスの可能性〜ウイルス予報と体にいいウイルス?〜

この大学は「未来疫学」というものが登録商標にされているんです。これは、未来にどういう感染症が起こるか、しっかりと未来を予測して、予防するということですね。未来にどういうウイルスが流行るか分かれば、今のコロナウイルスみたいにあたふたしなくても済むんですよ。なので、変異率も先の組換えの研究も、未来疫学ですね。というわけで、2021年4月から国際家畜感染症防疫研究教育センターから感染症未来疫学センターに名称を変更しました。もちろん、組織改革を行って研究内容も変えていきます。

だから最終的なゴールとしては、まるで天気予報みたいに、近未来に起こる感染症を知らせる感染症予報を目指しています。

感染症学という分野は、動物にしても人にしても病気になったり死んだりするので、研究をやっていると最終的には閉塞感が来るんですよ。なので、明るい方を見るには、ポジティブな要素に結びつく感染症の研究も必要になります。

そこで、今は、役に立つウイルスも存在しているかもしれない、という研究をしています。

植物にもウイルスが感染しています。人間が食べたら、普通は消化されてバラバラになるんですけど、植物のウイルスの中には、なぜかそのまま通過して、便に出てくるものもあるのです。

比較するために例えば、C型肝炎ウイルスってあるじゃないですか、このウイルスは注射の回し打ちや輸血などで感染していくので、飲んでも理論的には感染しないんですよ。どうなるかというと消化されてバラバラになっちゃうんですね。

一方ある種の植物ウイルスはなぜか消化されずに便のなかに出てきている。もしこのウイルスが悪いこと をしているのなら、下痢とかなるはずですが、実際には何も病気を起こしていません。だから悪いことはしてないんですよね。いいことをしているか何もしていないのかの二択なんです。例えば植物ウイルスのタンパク質が抗原となって免疫をちょっとだけ活性化しているんじゃないのかとかね。おそらく免疫をマイルドに活性化していて、毎日植物を食べることによって免疫を維持しているのではないでしょうか。その効果は、風邪をひきそうなときにひかないとか、胃腸炎になりそうなときにならないとか、そんな風に表れると考えています。ウイルスが役になっているという研究は継続していきたいですね。

…ありがとうございます。最後に高校生に伝えたいメッセージをお聞きしてもいいですか?

社会情勢が厳しければ厳しいほど、自分というものをしっかり持って、10年20年後の自分の姿をしっかりと思い描いてそこに進んでいってほしい。ただ、そこで重要なのは、思い描いていた道を外してしまった時に、それでダメだと思うのではなく、冷静に判断して修正を加え、そこから10年後20年後を思い描くこと。しっかりと短期・長期目標を作って進んで欲しいですね。

それと、もしかしたら、努力することがカッコ悪いと思っている学生さんもいるかもしれません。しかし、努力は、かっこ悪くてもした方がいいです。そうじゃないと生き残っていけないんじゃないかと思います。例えば、僕が博士課程に進んだ時には、ほとんどの同級生は職を得て給料をもらい楽しそうにしていました。でも、いつかはそれなりの研究者になれるのではないかと思って、歯を食いしばって頑張ったからこそ今があるのかもしれません。苦しくてもそれに向きあって努力を続けると、かならず道は開けます。


コロナ禍の影響もあり、ウイルスにはマイナスイメージがくっついていたのですが、子どもごころを忘れていないかのような、楽しそうに研究を話す姿にとても惹かれてしまいました!

歴史的瞬間を捉えた研究、役に立つウイルスや、感染症予報など、次世代の研究の第一線を走っているものばかりで、実直な努力を積み重ねたからこその、多様な視点と発想力を持つ先生の研究を取材できてよかったです!

これで今回の先生大図鑑は閉幕とさせていただきます。最後まで読んでいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。

※ インタビューは感染症に配慮して行っております。

文章:こぶじめ

インタビュー:2020年11月26日